記事(一部抜粋):2017年6月号掲載

政 治

税金なのに保険を謳う「こども保険」の姑息

教育投資は国債発行が筋

 次世代のホープといわれる小泉進次郎・農林部会長ら自民党の若手議員を中心に構成された「2020年以降の経済財政構想小委員会」が、「こども保険」なるものを創設する提言をまとめた。社会保険料を0.1〜0.5%程度増やし、所得制限なしで現行の児童手当に一律月額5000〜2万5000円を上乗せして幼児教育・保育の負担軽減や実質無償化を図るというものだ。教育無償化は「働き方改革」に続いて、安倍政権の政策の柱となるなどとして話題になっているが、この「こども保険」、はたして真っ当なのか。
 まず「保険」の意味をはっきりさせよう。保険とは、偶然に発生する事象(保険事故)に備えるために多数の者(保険契約者)が保険料を出し、事象が発生した者(被保険者)に保険金を給付するというものだ。
 それでは「こども保険」はどうか。これはこどもの保育、教育のためのものなので、偶発事象(保険事故)は「こどもが生まれること」になるだろう。そして保険契約者は公的年金の加入者、つまり20歳から60歳までの現役世代、被保険者は「子育てをする人」になるだろう。
 しかし、そうなると大いなる矛盾が生じる。子育ての終わった現役世代の人には、偶発事象はまず起こりえないからだ。これらの人は保険料を取られるだけになってしまい、「こども保険」に入るメリットはない。一方、被保険者はこれから子育てをする若い人である。そして若い人の多くは子どもを持つ。これでは「保険」にならない。
 つまり、こども保険は保険原理から逸脱しており、保険には当たらない。
 実は現行制度でも、「子ども・子育て拠出金」というものがあり、厚生年金保険料と同時に徴収されている。こちらは保険料とは名乗っていない。保険ではないからだが、国民がよくわからないうちに「税金」のように巻き上げられている。
 このようなハッキリしない「拠出金」の存在が、社会保険に対する国民の信頼を損ねているのだが、こども保険も同じ類だ。実態としては追加的な税である。
 しかし、正直に「税金」であることを打ち出すと、世間から反発をくらう。だから「保険」に名前を変えて国民から徴収しようとする。小泉進次郎氏は、増税を目論む財務省の走狗となっているわけだ。保険ではないのに保険と称して国民から税金を徴収しようとする発想が情けない。
 一方で、子育て支援の財源を「教育国債」で賄うという考え方がある。実際、自民党内にもそうした声がある。
 教育国債は、教育を「未来への人的投資」として見る。「投資的経費」については、その財源は借り入れ、債券発行で賄うのが原則であり、国債で調達するというのは自然な考え方だ。
 先進国では、経費を経常的経費と投資的経費に分け、経常的経費は税財源、投資的経費は国債で賄うというのが一般的な予算運営である。日本の財政学者や財務省は「国債ではなく、何が何でも税財源を優先すべきだ」とよく言うが、合理性を欠いている。
 この観点から、誰が負担するかと考えると、それは将来世代だろう。将来世代が便益を受けるので、その世代が負担するという意味で受益者負担になる。受益者負担なら、使途も教育分野全体に回すことができるし、一般国民にとってもわかりやすい。
(中略)
 こども保険は増税と同じなので、増税・財政再建派、つまり財務省がバックにいる。一方、教育国債は財政再建を棚上げする反財務省グループが推している。
 そうしたなか、5月16日に自民党内に興味深い勉強会がつくられた。「現在の財政は最悪の状況にある」として、財政再建のために具体策を検討するという勉強会だ。財務省出身の野田毅・前税制調査会長が代表発起人となり、野田聖子・元総務会長と中谷元・前防衛相が呼びかけ人、村上誠一郎・元行革相が事務局長を務めている。
(後略)

 

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