記事(一部抜粋):2017年5月号掲載

経 済

航空機産業に「大統合」シナリオ

【情報源】

“勝算なき解体”と“上場廃止危機”が加速している東芝とはレベルは異なるが、わが国を代表する名門・三菱重工業も造船やエネルギー、航空機部門で相次ぐ納入延期や多額の損失を強いられ、組織の硬直化によるリスク管理の甘さを露呈している。
 三菱重工の2016年4~12月期決算は造船部門の不振などで最終赤字に転落、7割近くの営業減益を強いられた。造船事業では海外から受注した大型豪華客船の工期の遅れで建設費が大きく膨らみ、2500億円もの損失を余儀なくされている。米原子力発電所を巡る仲裁案件では損害賠償を支払わされ、火力発電事業では不採算案件に絡む約7600億円もの請求問題を抱えたまま、解決のメドすら立っていない。また、逆風が吹き荒れる原発事業で経営難から公的資金で支えられている仏原子力大手のアレバとの資本業務提携に踏み切り、原発リスクはさらに膨らんだ。
 そして、最大懸案の航空機事業では子会社の三菱航空機で開発中の国産ジェット機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の初納入が当初計画から7年遅れの2020年半ばまでずれ込むという。なんと5度目の延期である。度重なる延期の背景には三菱航空機の事前の情報収集不足や甘いリスク管理に加え、ノウハウの欠如から世界基準をはるかに超える安全対策を求める国土交通省の官僚体質も見逃せない。今後は遅延による受注環境の悪化やキャンセルリスクに晒されることになるが、このままでは三菱重工の中小型機事業は「米ボーイング社との提携で下請けとして活路を見出すしかない」(業界関係者)のが実状だ。
 今回の納入延期を受けて三菱航空機の森本浩通社長は引責辞任に追い込まれているが、トップ交代はこれで3度目。多額の損失を出した造船事業でも主力の長崎造船所のトップが交代しており、こうして部門トップの首の挿げ替えを繰り返すだけでは、縦割り主義の弊害や自前主義から生まれる過信といった同社が抱える根本問題は解決しない。
 ところで、MRJの迷走を契機に日本の航空機メーカーの事業統合の観測が流れている。MRJはプロペラ機「YS11」以来、わが国にとって半世紀ぶりの旅客機開発であり、航空機産業を新たな柱に育てる牽引役としての期待を背負ってきた。政府も数百億円の補助金で支援してきたが、相次ぐ延期による信用の失墜で日本の航空機産業そのものにも暗雲が漂ってきた。そこで企業共同体で完成させた「YS11」同様、三菱重工と自衛隊機で実績のある川崎重工業のほか、富士重工業、IHIとの航空機事業を統合、技術や人材の集約化、コストの効率化によってグローバルな舞台で戦える産業を目指すシナリオが浮上している。
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】