記事(一部抜粋):2017年4月号掲載

社会・文化

真珠宮ビル跡地「真の買主」は?

表向きの買い手は元RCC関係者……

 日銀が八方手を尽くしてもデフレを改善できないなか、なぜか新宿駅南口のすぐ脇の更地で、バブル時代を彷彿とさせる巨額の転売話が出回っている──。こんな奇妙な現象の舞台裏を本誌でご報告したのは、昨年8月号でのことだった。
 新宿駅南口から徒歩3分の好立地にある約150坪の空き地の売買をめぐり、当時、30億円、40億円、50億円と、まるで30年前にタイムスリップしたかのような売買話が不動産ブローカーの間で囁かれていたのである。俄かには信じ難い話で、到底、実現することはないと目されていたものの、ついに2月末、この土地の不動産登記簿が書き換えられた。驚いたことに、巨額のキャッシュをつぎ込み、曰くつきの物件に手を出したのは、設立して4カ月しか経っていない資本金1万円の合同会社だった。
(中略)
 夢は際限なく膨らむものの、実現の目途がない「万馬券」のような物件が売れたのは、登記簿によれば今年2月20日。購入したのは、昨年10月末に設立されたばかりの平河町に本社を置く合同会社。冒頭で触れたとおり、資本金は1万円、本社は賃貸マンションの一室で、代表役員はたった1人の怪しげな会社だ。
 事情通が説明する。
「売買価格は27億円前後だった模様です。取引はこの合同会社の委任を受けた弁護士と、後藤さん側の弁護士の間でおこなわれたと聞きました。当然、銀行から融資は受けていませんから、この合同会社がキャッシュで支払ったわけです」
 仮にこの数字が正しいとすれば、1坪当たり1800万円、1㎡当たり545万円という計算だ。
 ちょうど国土交通省が1月1日の1㎡当たりの価格を調査した公示地価が3月22日に公表されており、新宿駅の近隣商業地区の価格を見比べると、1㎞離れた三井ビル周辺が1㎡930万円。約650メートル離れた北側の商業地区が1520万円である。公示地価が実勢価格より安くなる傾向を考え併せれば、決してべらぼうな値段とは言えない。
「それにしても……」と事情通が続ける。
「この取引で謎なのは、誰が30億円近い現金を出資して、後藤さんから買い取ったかという一点です。合同会社は、この真珠宮ビルの跡地を買い取るために設立された表向きのダミー。会社登記に記載されている通り、自己資本はゼロに等しい。普通に考えれば裏側にいるのは外国のファンドか何かという印象なのですが、最初、何者かわからなかった合同会社代表者の経歴が明らかになっていくとともに、本当は別筋の金主なのではないかと勘ぐる向きも出てきました。というのも、この代表者は元銀行マンで、勤めていた富士銀行から、整理回収機構(RCC)に転職した経歴がある。また、売買契約の最前線に立った弁護士も、同じ頃、RCCに籍を置いていたようです」
 今から20年前、日本を揺るがせた住専問題を覚えておられるだろうか。総量規制で土地に融資できない銀行にとって代わった住専(住宅金融専門会社)7社が、ジャブジャブと際限なく融資した結果、8兆円を越える不良債権を生じさせた金融危機である。
 末野興産の末野謙一社長(当時)や桃源社の佐佐木吉之助社長(同)など、少し遅れてきたバブル紳士が次々と表舞台に登場したのをご記憶の方もいるだろう。
 RCCは住専の焦げついた債権を、これらのバブル紳士たちから容赦なく取り立てる目的で1996年につくられた会社が前身となっている。いかなる奇遇か、今回、土地の買い手側2人が、RCCで机を並べた職場の同僚だったわけだ。
「住専問題で登場したバブル紳士たちは最終的に多くの場合、破産してしまいますが、問題発覚からそこに至るまでの間に時間的余裕があったため、こっそり資産を移管したり、隠したりとうまく対処した人が沢山いました。実際、RCCに見つからずに隠しおおせた連中で、今でも派手な生活を送っている者は少なくないのです。彼らなら、蓄えている資金の中から30億円くらいの現金をポンっと用意できるに違いありません。つまり、買い手となった合同会社の代表が、かつて取り立てで知り合ったバブル紳士の誰かを金主にしているのではないかと噂されているのです」(同)
 もしそうならば、バブルというピラミッドの中でミイラ取りがミイラになったような話だが、巨費を投じた合同会社はこれからどのような出口戦略を描いているのか。
(後略)

 

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