記事(一部抜粋):2017年3月号掲載

経 済

将来の空き家を量産「サブリース業界」

アパート建設ラッシュで泣きをみるのは……

 先進国の中でもっとも巨大な借金、膨れ続ける社会保障費、歯止めの利かない少子高齢化による税収減……。目下、我が国が直面している予算上の問題は、どれ一つをとっても改善のメドが見つけられない深刻なものばかりである。しかも不幸なことに、今国会の予算委員会を見るにつけ、飛び交っているのは、無能な稲田朋美防衛大臣のクビを狙う野党の質問ばかり。将来の財政的クライシスを見越したやり取りを耳にすることはないのだ。
 だが、時期がはっきりとしないものの、必ずいつか訪れる壊滅的危機に目を向けられないのは、政治家が近視眼的という理由ばかりではない。そもそも人間の脳は、大昔のサバイバルの遺伝子により、いつやって来るかわからない将来のカタストロフィーより、目の前の報償に一喜一憂するようにできているのだという。
 政治家と同じく将来の危機に目をつぶっている市井の人々は少なくあるまい。例えば、景気のいいサブリース会社の営業マンに勧められるまま、アパートを1〜2棟新築してしまった地方の地主たちである。経済誌記者が話をする。
「この数年、大東建託を最大手とするサブリース業界の業績はうなぎのぼりの状況で、2017年3月期も過去最高を更新する勢いです。しかし、すでに首都圏の地価はミニバブルといってもいいくらいの高値圏ですし、不動産投資の利回りも4%まで低下している。にもかかわらず、不動産業界ではサブリースが一人勝ちなのです」
 なぜ、サブリースが儲かり続けているのか、そのカラクリを大東建託の例をあげて見てみよう。
 今年1月に発表された16年4〜12月期の売上高は1兆1000億円を越えて、8期連続で過去最高を更新した。経常利益も1093億円で前年同期比20%以上の伸び率。大東建託のHPでは、管理する不動産の数が今年1月、ついに100万戸を突破したと大いに胸を張っている。
 不動産業者に解説してもらおう。
「サブリース業者は、大体三つの事業体で成り立っています。一つはアパートを建設する建設部門、二つ目がアパートの入居者募集や家賃徴収などを請け負って手数料を稼ぐ管理部門、三つ目がLPガスの供給、インターネットサービスなどの周辺事業。つまり、営業マンが地主を説得してアパートを一棟建設させれば、その後も関連事業でその果実を延々と受け取ることができるわけです。とはいっても、不動産管理部門はどちらかといえば薄利多売。利益の多くはアパートの新築で得られています」
 確かに大東建託の場合、今回の16年月〜12月期の売上高を見ても、不動産事業は6100億円以上を売り上げでいるものの、総利益は547億円にすぎない。利益率は8.9%だ。一方の建設事業を見ると、4577億円の売上高に対して総利益は1453億円で、利益率は30%を越えている。建設事業の総利益が全体の総利益である2126億円の68%に達していることからも、アパート建設が最強のドル箱であることは間違いあるまい。
 不動産業者が続ける。
「大東建託に限らず他業者も構図はほぼ同じ。つまり、サブリース業者は新築アパートを立て続けていかなければ、最大の収益の柱を失うことになる。そのために強力な営業部隊を持ち、地方の大地主や、親が持っていた土地の相続人に営業をかけていくわけです。現在は超低金利の時代ですから、銀行のアパートローンが1%台というケースも珍しくありません。遊休地を持っている地主なら、上モノだけの建築費なのでほぼ全額をローンにできる場合もあり、地主は懐を痛めずに新築アパートを建てることが可能です。加えて、相続税の増税もサブリースの追い風になりました。アパートローンという借金で資産を圧縮できるし、賃貸アパートは評価額を低く見積もれるからです」
 さらに、長期間の一括借り上げと家賃保障という鬼に金棒のようなセールストークが展開するわけだ。地方の地主がこの魅力的すぎる提案に抗うことは難しかろう。
「わかりやすく一つの例を見てみましょう。例えば9000万円で地方の遊休地にアパートを2棟建てます。部屋数は2DKや1LDK、2LDKを合わせて10戸。全額を銀行から借りても、目下の金利なら30年ローンにすれば返済は月額30万円程度でしょう。一方の収入は、平均一部屋6〜7万円強と考えて60〜70万円。サブリース業者に10〜15%程度の手数料を差し引かれても50万円が家賃として振り込まれ、ローンを支払っても20万円が手元に残るという計算です」
 営業マンに言われるがまま、アパート建設の契約書に捺印すれば、融資をしてくれる銀行もセットで、自らの出費はなし。汗をかかずに月収20万円は今時悪くない話だ。
 しかし、本稿の冒頭で紹介したように、その黄金の方程式がやがて成り立たなくなる日がやってくる。まず第一に金利は永遠に低いはずがない。金利が上がれば返済金額はうなぎのぼりで手取りの収益はみるみる減っていく。しかし、なにより決定的な根拠は、空き家問題である。
(後略)

 

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