記事(一部抜粋):2017年3月号掲載

政 治

天下りは官僚国家の本質

霞が関コンフィデンシャル

 文部科学省で早稲田大学への天下りが発覚した問題で、内閣府の再就職等監視委員会が組織的な斡旋行為があったことを明らかにした。天下りはなぜ後を絶たないのか。問題の本質は何か。
 公務員の再就職には、正当なものと不当なものがある。正当な再就職とは、退職後に独力または役所以外の助けを借りて仕事を探して再就職することをいう。不当な再就職とは、退職前に自分の権限を利用して再就職の準備をしたり、役所の斡旋・尽力によって再就職することで、これがいわゆる「天下り」である。
 2007年、第一次安倍政権の時に天下りを是正する国家公務員法改正がおこなわれた。そのポイントは、国家公務員の再就職を役所が斡旋するのを禁止したことと、それを監視する再就職等監視委員会の設立だった。
 この法改正によって08年12月、再就職等監視委員会が設置されたが、当時の民主党などの反対で国会同意人事がおこなえず、発足後も委員長・委員不在で開店休業状態が続いた。
 民主党政権末期の12年3月、ようやく委員長・委員の国会同意人事が得られたが、監視委員会が本格的な活動を始めるのは第二次安倍政権に移行後で、国土交通省が元同省次官の再就職を斡旋していたことが国家公務員法違反と認定された。
 今回も監視委員会が機能したことで、文科省がOBを使って組織的に天下りを斡旋していたことがわかった。天下り問題に取り組んだ第一次安倍政権の遺産が効果を発揮したといえる。
 民進党は、今度の天下り斡旋疑惑で首相の責任を追及するというが、民主党政権時に監視委員会が実質的に機能しなかった原因が自分たちにあったことを忘れてはいけない。
 天下りは、これまで長く続いてきた慣行なので、簡単にはなくならない。国家公務員が退官後に独力で就職するのは実際に大変だし、自分の実力以上の良いポストを得ようと、出身母体の役所に頼ってしまうことが原因だ。役所の権限の強さ、そして公務員がそれを一生自己のために利用しようとすることから生じる官僚国家の本質でもある。
 ところで、天下りが、民主党政権下では半減し、その後増加に転じたという新聞報道があったが、それは本当に実態を反映したものなのだろうか。
 新聞で報道されていた資料には出典が明記されていない。ただし、数字をみると、内閣官房が公表している「国家公務員の再就職状況」をもとにしているのがわかる。
 国家公務員の再就職状況について、かつてはオープンな情報がなかったが、国家公務員法改正で、天下り斡旋禁止とともに開示規定が整備されたため、いまでは内閣官房のサイトで情報を得ることができる。2009年1~3月分から公表されており、今回の一件でも個人名を特定するのは簡単だ。 
 公表されている国家公務員の再就職状況の数字をみると、確かに民主党政権下の2010年度には減少している。
 ところがこれにはカラクリがある。実態は天下りであるにもかかわらず、「現役出向」という形で処理したため、見かけの数字が減少したのだ。
 現役出向とは、かつて30歳程度の若手職員を民間企業に出向させ、民間の感覚を体験させる制度として存在していたもの。ところが民主党政権になると、この制度の適用対象を退職間際の年配職員にまで拡大した。そして従来の天下りに代わり、現職のまま出向させるという、信じがたいことがおこなわれたのである。
 これは「再就職」ではなく「出向」だから、天下りの数は減るに決まっている。
 民主党は、野党のときには現役出向を「裏下り」だと批判していた。ところが政権を取ると、手のひらを返すように官僚側の意向どおり「現役出向は問題なし」と急変した。
 しかし、現役出向は天下りと実質的に変わらない。いや、ある意味では天下りよりタチが悪い。なぜなら、役人が役人の身分のまま民間企業にやって来るわけで、受け入れ側からすれば、役所に占領されてしまったように感じるからだ。
 しかも、現役出向は、その後の再就職の際にも有利になるように運用されている。つまり、いったん現役出向した先に、その後秘かに天下りするケースが横行しているのだ。
 一応は公募手続きがとられるが、一度、現役出向した者は他の応募者に比べて圧倒的に有利である。民主党政権下での現役出向の拡大、お墨付き化によって、天下りが広がっているわけだ。
(後略)

 

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