記事(一部抜粋):2017年1月号掲載

経 済

カジノ解禁効果も副作用も僅少

【情報源】

 本欄でも度々取り上げてきた「統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」(カジノ法案)が、ようやく成立に漕ぎ着けた。ところで、ドナルド・トランプ次期米大統領はかつてカジノを経営していたが、大統領選でトランプ氏の大スポンサーだったのが“カジノ王”の米ラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長。同氏はかねてから日本進出を熱望しており、安倍晋三首相はカジノ解禁を来年初めの日米首脳会談の手土産にするつもりだろう。
 今回の法案成立ではカジノの負の側面に目を瞑って、短時間の審議のまま数の力で押し切った自民党の手法に批判が集まった。今後、1年以内をメドに入場制限や治安対策などの実施法案を決めることになるが、そもそも設置数が極めて限定的で様々な制限が課せられるカジノに、過大な期待も過剰なアレルギーも現実的ではない。
 安倍政権は成長戦略の目玉になるはずだったTPP(環太平洋経済連携協定)の発効が棚上げになることで、代わってカジノ解禁による観光客の増加や雇用創出を見込んでいるようだが、その経済効果には疑問が残る。米アトランティックシティーではカジノの廃業ラッシュが起こり、マカオでも収入は半減、「とくに東アジアはカジノが乱立、最大顧客の中国人観光客も減速して市場は飽和状態にある」(大手シンクタンク)という。さらに巨大施設の建設効果や雇用増加は立地地域に限定されるうえ、カジノの運営ノウハウを持たないわが国は収益の大半を米MGMやサンズなどの外資に吸い上げられる懸念もある。政治家や企業の利権が生まれたとしても、これではとてもではないが成長戦略の目玉にはなり得ない。
 副作用としては、ギャンブル依存症やマネーロンダリング(資金洗浄)、暴力団の関与、治安の悪化が指摘されている。わが国ではパチンコなど身近なギャンブルの依存症数は500万人を超えるが、カジノの合法化で依存症が急増したり、急速に治安が悪化、マネーロンダリングが急拡大するとは思えない。それよりも、カジノ解禁を機にパチンコや公営ギャンブルを含めた依存症対策や警察が黙認してきたパチンコの換金問題など、カジノにとどまらない包括的な制度設計に取り組むべきだろう。
 ギャンブルといえば、パチンコ・パチスロ業界は深刻な構造不況に喘いでいる。つい先日、大手パチンコメーカーの京楽産業.が2016年6月決算で売上高が前期の約1000億円からなんと3分の1の339億円まで激減して277億円の最終赤字に転落、業界に激震が走った。
(後略)

 

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