記事(一部抜粋):2016年12月号掲載

経 済

タカタ「1兆円倒産」に現実味

【情報源】

 欠陥エアバックの大規模リコールに揺れる自動車安全装置トップメーカーのタカタの法的整理説が浮上してきた。会社更生法となれば負債規模は1兆円を超え、20年ぶりの「1兆円倒産」となる。すでに米国子会社のTKホールディングスが米連邦破産法適用の方針を打ち出しているが、タカタ本体は中小部品メーカーへのダメージや部品供給の停滞を回避するために、私的整理による再建を模索している。しかし、ステークホルダーの利害が複雑に絡み合うなかで私的整理によって事態を収拾できるのかは不透明で、調整難航の末、時間切れで法的整理に踏み切る可能性は否定できない。
 タカタは年内をメドにスポンサーを選定して再建計画を策定する予定だが、再建手法をめぐるスポンサー候補とホンダ、トヨタ自動車など自動車メーカーのスタンスは異なる。想定される再建スキームは、300億円の社債を抱える三井住友銀行など金融機関の債権放棄を前提とした本業とリコール費用を分離する新旧分離方式だが、スポンサーは1兆円規模に達するリコール費用や損害賠償などの偶発的債務を遮断するために透明度の高い「法的整理」を主張。リコール費用を立て替え払いしている自動車メーカーは法的整理でタカタ向け債権が大幅にカットされて損失が拡大することによる株主代表訴訟リスクや部品の安定供給面から「私的整理」を主張している。
 実は今回のケースでは、「会社更生法などの法的整理でも、日本航空のように取引先へのダメージを考慮して一般取引先の債権は保護される公算が大きい」(金融関係者)といい、私的整理でもタカタは100%近い減資を強いられ、金融機関の債権放棄は避けられない。つまり、法的、私的整理どちらでも再建スキーム自体はそれほど変わらないわけだ。ただ、法的整理は債権者の過半数の合意で成立するが、私的整理は全会一致が原則であり、合意は容易ではない。さらに、自動車メーカーのなかでも肩代わりしているリコール費用の規模やスポンサー候補との関係は異なり、「自動車メーカー同士の利害は必ずしも一致せず、私的整理に向けて足並みが揃う保証はない」(自動車メーカー幹部)という。再建策の調整が長期化すれば、人材の流出や取引先の撤退によって「破産」という最悪の事態を招きかねず、時間的な制約から法的整理を選択せざるを得なくなる可能性もある。
 一方で、大型破綻の株式市場への影響を避けたい首相官邸の思惑もある。
(後略)

 

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