(前略)
手元に甘利事務所がかつての有力後援者とやり取りした文書がある。有力後援者の名は、玩具メーカー「バンダイ」の元会長、山科誠氏だ。
山科氏は、甘利氏の資金管理団体「甘山会」や甘利氏が代表を務める自民党神奈川県第13選挙区支部へ自らの資産管理会社など数社を通じて、毎年100万円以上の献金、パーティ券の購入をしていた。03年11月に衆議院選挙があったときは陣中見舞い200万円、当選祝い100万円などを含め、気前よく870万円を支援し、10年にも選挙区支部だけで合計555万円の献金をしている。大口の後援者だった。
入手した文書は05年1月、甘利事務所が山科氏の資産管理会社に宛てたもので、甘利氏並びに甘利事務所がいかにして献金を集め、秘書の給与をどう工面していたか、その一端が記されている。甘利氏の「カネ」に対する考え方が分かって興味深い。
《お疲れ様でございます。昨日はご馳走様でした》で始まる当時の秘書の手書きサインのある文書はまず横浜事務所の活用について、《特に横浜に関しては、団体とのお付き合いが多くその個別後援会の立ち上げも考えなければなりません》と記し、次のように例を挙げる。
《行政書士による甘利明の会、社会保険労務士による甘利明の会(仮称)代議士より強い要望あり、石油関係団体 ガス関係団体、各種専修学校》
続けて《現在の財政状況ではお恥ずかしい話ではありますが、高額な家賃を支払うことができませんので、家賃の支払いにもご配慮いただければと思っています。裏事務所的な存在であれば問題はないと思いますが、看板を掲げた時点で家賃の支払い・金額・常駐者の存在・経費の捻出方法・普段の人の出入りが警察等の監視下に置かれることになりますので現在の事務所の財政上考慮していただきたいとおもいます》と家賃の支払を依頼し、事務所経費の捻出についても《秘書の人数が5〜6名多いので人件費が多くを占め、社会保険も完備しているのでその負担がかなりの割合を占めている状況であります。しかし集金力のある事務所は逆に秘書の数を増やし選挙運動を完璧に仕上げようとしている事務所もあると聞いています。これも小選挙区制度のためであります》と記している。
このくだり、「いい人だけと付き合っていても選挙に落ちちゃう。小選挙区制だから」と辞任会見で述べた甘利氏の言葉を彷彿とさせる。
(中略)
また山科氏は、甘利事務所の要請に応える形で、破格の賃料で事務所を貸していた。場所は横浜市のJR関内駅から300mほど離れた横浜市役所近くの一等地の貸ビル。入手した「事務所賃貸借契約書」によれば、山科氏の経営する「なぎさホテル」が貸主になり、甘利氏が代表の選挙区支部が04年12月から2年間借りる契約となっている。賃料は1カ月2万円。
近隣の物件の現在の相場を調べると、19坪で12万円、13坪で20万円などとなっている。10年前としても2万円というのはかなり優遇された賃料だ。山科氏が借り、それを選挙区支部へにまた貸ししていたようで、その差額が仮に10万円だとすると年間120万円の“献金”になる。
さらに山科氏は、美術品鑑賞が趣味という甘利氏から05年11月に2点の美術品を「逗子文庫」という自分の会社を通して、1500万円一括現金払いで購入していた。「北村雲龍庵作武者絵硯箱」と「二十世堆朱陽成作碁器」の2点。入手した売買契約書や領収証のコピーには契約者として甘利氏の直筆のサインがある。
だが、その2点が実際は100万円の価値しかないというのだから驚きである。
(後略)