記事(一部抜粋):2016年4月号掲載

社会・文化

中野区の公園再整備計画に疑義あり

区民の大半が反対、4選の区長はなぜ……

「りくじょうとらっくはいらないよ」(未就学女児)「赤ちゃんから年寄りまでが気軽に遊べる草地広場のままがいい」(40代主婦)「大樹を切る開発はしてはなりません」(70代男性)
 3月13日の日曜日に東京都中野区にある「平和の森公園」の草地広場で開かれた「交流のつどい」。集まった利用者たちの口からは次々と怒りの言葉が飛び出した。
 昨春に突然持ち上がった同公園の再整備構想。ほぼ全区民が現状維持を訴えて反対しているが、その声を無視して一周300mの陸上競技トラックや体育館などの整備が進められようとしている。構想の背景を調べると身勝手な政治家の思惑が浮上した。
(中略)
 反対意見しか出ない構想を中野区はなぜ強引に進めるのか。
 昨年9月13日にTBSで放送された「噂の東京マガジン」でも取り上げられ、そこで田中大輔区長は次のようにコメントした。
「オリンピックに向けてのスポーツ・健康づくりのムーブメントを中野区としてはもっともっと盛り上げていきたい。陸上の練習をするような場所が中野区にはない」
 そして「区内には公式記録をとることのできる陸上トラックがなく、それを望む声が区民から上がっているとのこと……」とナレーションが流れた。
“陸上トラックを望む区民の声”について中野区体育協会に聞くと、
「中野区陸上競技協会が要望したと聞いている。連絡先は個人宅なので教えられない。連絡を取るときは手紙を出している」という。
 その中野区陸上競技協会はこう回答した。
「陸上トラックは前々から区に要望している。場所はどこでもいい。中野区にだけ陸上トラックがない。平和の森公園の周辺住民が反対しているようだが、陸上トラックは要る」
 同協会主催の中野区陸上競技大会は前回、2014年秋に板橋区新河岸陸上競技場で開催され、50名ほどが参加したという。「会員は約30名で、現在活動は休眠状態。次回の開催は未定だが、陸上トラックが設置されれば会員を増やしたい」(同会)とのこと。陸上トラックを要望した区民は確かに存在した。ただしその数はごくわずかだ(中野区の人口は今年3月1日現在で32万1973人)。
 23区ではほかに荒川、大田、台東、千代田、中央、豊島、文京、港にも管理する陸上トラックはないことが各区役所で確認できた。横並びで陸上トラックを保有しなければならぬ理由はない。自家用車しか交通手段のない地方都市ならともかく、交通機関を利用して他区の競技場へ向かうことに何の不都合があるのか。ここに設置される300m陸上トラックや体育館で五輪・パラリンの選手が練習するわけでもない。
 陸上トラックは400mが一般的だが計画されるのは300mで、予想図を見ても無理やり押し込んだ印象が強い。関係者がこう推測した。
「陸上トラックがポイントだ。トラックをつくるなら区長5選を支援すると田中にニンジンをぶら提げた人物がいる。体育館や他の公園施設は運動スポーツ公園として体裁を整えるための後づけだ」
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】