小選挙区(1人区)を中心にした選挙制度は、相対的な多数派が絶対的な議席を得られるように設計されている。それは急激な社会情勢の変化に対応して迅速に的確な政策決定ができるように工夫されたものである。しかも、政策決定が民意から離れた場合には、投票の一部が移動して、相対的な多数派と少数派が逆転し、政権交代が起こり政策も変更される。
これが、現行の衆議院議員選挙制度に込められた期待であった。しかし、現実には、自民党の「世襲」議員と公明党の「思考停止」した組織票が小選挙区の過半数を支配してしまい、事実上、政権交代は起こり難い状態になってしまった。
そのような力を背景にして、第二次安倍政権はほとんど「やりたい放題」である。
過去70年間にわたり「軍隊」の保持と「交戦権」の行使を禁じた憲法9条は海外派兵を禁じている……としてきた政府解釈を、説得力ある理由も示さずに変更してしまった。沖縄県民の反発が明らかであるにもかかわらず、既定の方針だからとして、半ば暴力的に辺野古の新基地建設を強行しようとしている。東日本大震災の際に原発の危険性と不経済性が明らかになったにもかかわらず、強引にその再稼働を進めている。さらに、結論において政府を批判している言論人を「不公平」とレッテルを貼り論壇から排除する。まさに「安倍暴走」としか言いようがない。
事ここに至って、ようやく、これまでバラバラに戦って惨敗を続けていた野党各党が、自・公に学び、一致協力して選挙を戦い政権交代を目指す話が進んでいる。
これを警戒した自民党と公明党側から、「野合」であるという批判が向けられている。曰く、「理念」も「政策」もバラバラである。
しかし、理念について言えば、自由主義と民主主義を基本理念とする自民党と日蓮仏法に由来する立正安国を基本理念とする公明党が理念を異にすることは明白である。
その点で、今回の野党5党は、立憲政治(つまり、憲法を遵守する政治〈憲政の常道〉)を取り戻す……という、最上位の大義を共有しており、そういう意味で理念の不一致はない。
さらに、政策については、最近の論争を振り返ってみれば、共通の基本政策が存在することは明らかである。
まず、もはやアベノミクスの失敗が明らかである以上、消費税の再増税を行えば経済が破綻してしまうことは必至で、消費税再増税の「延期」は必定である。
また、原発の危険性と不経済性が明らかである以上、原発の廃止と他のエネルギーへの転換は必定である。
また、世界史上で先例のない、70年も戦争(海外派兵)をしたことのない大国(平和大国)としての有為な立場を維持して、世界平和のための仲裁者になるべく、少なくとも戦争法を廃止することは不可欠である。
また、沖縄に対する差別と米国に対する属国化の象徴のような、辺野古の新基地建設の中止は、最低限の常識である。
さらに、言論の自由の回復、年金資金の投機運用の禁止、待機児童の解消、(「地方創生」という美名による国策の押し付けではない)地方重視、(日本の農業を破滅させる)TPPの非承認など、共通政策は沢山ある。