記事(一部抜粋):2016年3月号掲載

経 済

マイナス金利でMRFが消失の危機

【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
C ある証券会社の幹部は、「マイナス金利の導入でオプション価格の評価ができず、CB(転換社債)のフェアバリュー(適正価格)も出せない。死活問題だ」と怒っていた。売り物である金融商品の価格が決められなければ商売上がったりで、怒るのは無理もない。価格を決められない理由は簡単で、証券会社や銀行が使っているオプション評価モデルであるブラック・ショールズ方式が、マイナス金利を想定していないから。このブラック・ショールズ方式は、ノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとフィッシャー・ブラックが開発した計算モデルで、株価、行使価格、期間、変動率そして金利をもとに簡便かつ短時間に適正価格を導き出せるので金融界で広く使われている。しかし、さすがのノーベル賞学者も中央銀行がマイナス金利を採用するとは思っていなかった。
A その米国もマイナス金利の検討に入ったと聞いたけど。
B 米国がマイナス金利を採用するのは難しいようだ。FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長も2月10日の議会証言で、FRBも2010年にマイナス金利の導入を検討したが導入を見送ったことを明かしている。そのうえで、「法的問題」についてまだ完全に調査が完了していないと語っている。つまり米国がマイナス金利導入するには法的な壁があるということ。ブラック、ショールズの両氏がマイナス金利を想定していなかったのも頷ける。
A マイナス金利の副作用はそれほど大きいと。
C 深刻なのは証券会社が顧客の株式投資の待機資金をプールするMRF(マネー・リザーブ・ファンド)が存亡の危機に立たされかねないこと。予兆はすでにMRFと同じ公社債投信のMMFで顕在化していて、投信会社の主力商品であるMMF(マネー・マネージメント・ファンド)が相次いで新規受け入れの停止に追い込まれている。MMFは短期国債やコマーシャルペーパーなどの安全性の高い金融資産で運用する投資信託だが、マイナス金利の導入決定を受け短期金融市場の利回りが急低下し、運用の継続が困難になったたからだ。2月8日には日興アセットマネジメントがマイナス金利が導入される前日の15日に顧客から預かったMMFを繰り上げ償還することを決めた。
B 他社も早晩、繰り上げ償還に追い込まれかねない。MMFの残高は1月末で約1.6兆円。解約された資金は証券会社の決済口座にあたるMRFに振り替えられるとみられるが、MRFもMMFと同じ公社債投信だから同じ運命を辿りかねない。
C MRFは株式を購入・売却する際の決済口座になっている。そのMRFが消滅しかねないのは投信業界や証券会社にとってまさに死活問題。MRFの残高は12月末時点で11兆2000億円と巨額だ。
A 円高や株価下落に気をもむ官邸の意向を黒田総裁が忖度してマイナス金利に踏み込んだとの見方もある。しかし、このままでは個人投資家が株式投資に利用するMRFが消失しかねないわけだ。
C そう。狙いとは逆に株価暴落の引き金にすらなりかねない。2月9日に白川真投信協会長はじめ証券会社や投信会社の幹部が日銀を訪れ、MRFへのマイナス金利政策の適用緩和を求めたのも、そうした危機感の現れだ。
A それにしても、なぜこのタイミングで日銀はマイナス金利という荒業を繰り出してきたんだろう。
(後略)

 

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