記事(一部抜粋):2015年10月掲載

社会・文化

デッチ上げられた恐喝未遂事件

担当した警部は“別件”で逮捕

 警視庁滝野川署が昨年12月に右翼団体塾長らを恐喝未遂の容疑で逮捕した事件(不起訴)が「デッチ上げ」だった可能性が浮上している。金銭を要求されたとして被害届を出した“被害者”の一人も、「実はカネを要求された事実はなかった」と証言、警察と“共謀”して事件を“つくった”という。一体どういうことなのか。 まずは、デッチ上げ逮捕だとの指摘が出ている事件の概要を確認しておこう。
《「脱税している」と因縁、建設会社を恐喝未遂 山口組系組幹部ら逮捕
 脱税しているなどと因縁を付け、建設会社から現金を脅し取ろうとしたとして、警視庁滝野川署は3日、恐喝未遂容疑で、新潟市東区一日市、指定暴力団山口組系組幹部、佐藤和基容疑者(62)ら男3人を逮捕した。同署によると、いずれも容疑を否認している。
 逮捕容疑は7〜8月、新潟県内の建設会社に対し、所属する右翼団体「菊守青年同盟」名義で「法人税を脱税している」などとする通知状などを送付。同社の社長が応じずにいると、「恥をかかされた」「若い衆を差し向けるぞ」などと言って現金200万〜300万円を脅し取ろうとしたとしている。
 同社が警視庁に相談し、発覚した》(産経ニュース2014年12月3日)
 主犯格とされた佐藤は、菊守青年同盟加盟の右翼団体「薫風櫻花塾」の塾長(記事では「山口組系組幹部」と書かれているが本人は否定)。ほかに逮捕されたのは塩谷隆、さらに東京を拠点に右翼活動を続ける坂矢吉秋。
 記事にある《「脱税している」と因縁》を最初につけたとされたのは、坂矢。昨年7月24日、新潟市内の土建業者H社に、次のような公開質問状を送りつけた。
《……新潟税務署より指摘を受け修正申告した事実でありますが脱税行為は国家犯罪であり、二度とこの様な隠ぺい行為は無いと存じますが、我々は貴社の今後の見解と企業運営理念について伺いたい旨御通知致します……》
 その坂矢の言い分。
「H社は地元では評判の悪い札付き業者で、痛い目にあっている人が大勢いるという情報が、新潟の佐藤塾長を通じて入ってきた。それで質問状を送った。ただそれだけです」
 質問状を受け取ったH社は、東京都在住のさる人物(Xとする)に依頼して、坂矢に接触を図った。被害届を連名で出した当事者の一人でもあるXが言う。
「H社のA代表と親しいTという男に頼まれ、質問状に書いてあった坂矢氏の携帯に電話を入れた。『どういうつもりだ?』と。そうしたら坂矢氏が『新潟の佐藤氏と話し合ってくれ』と言うので佐藤氏と会うことにした。坂矢氏から金銭要求? 一切ありませんでした」
 7月29日、Xは佐藤を新発田市にある月岡温泉の旅館の一室に呼び出した。その場にはH社代表のA、そしてTも同席した。
 事を穏便にすませたいというのがH社側の狙いだったというが、話し合いは売り言葉に買い言葉で激しい言い争いになり、激昂したAが佐藤の胸ぐらをつかみ、残りの2人が間に割って入る一幕もあったという。
 8月1日、今度は佐藤がH社宛てに公開質問状を送りつける。
《話し合い中貴殿が激怒して小生の胸ぐらをつかみ暴力で威嚇行為を行い謝罪を強要した事実は断じてゆるされる行為ではなく……》《H社は休眠会社と言っておりますが謄本を確認したところ新潟市在住の札つきの不動産ブローカー(新潟県警が常にマークしている)が役員として名を連ねている事実も御通知致します……》
 臑に傷持つ企業と右翼団体の攻防。わざわざ記事にするような話ではないのだが、聞き捨てならないのは“被害者”の一人であるXが「自分の知るかぎり、脅されたことも、金銭を要求されたこともなかった。にもかかわらず要求されたという調書がつくられた」と証言していることだ。
(後略)

 

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