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芸能プロ最大手・吉本興業の資本金125億円から1億円への大幅減資が物議をかもしている。1億円減資といえば、今年5月にシャープが税制上の優遇措置のために実施を目論んだが世間の批判を買って断念している。ところが、今回の吉本興業は意外にも財務体質の改善が狙いだという。実は同社の利益剰余金は3月末で約140億円ものマイナスに陥っており、資本金の取り崩しによって資本準備金を上積みして財務の改善を図ろうというわけだ。
吉本興業は2010年に元ソニーCEOの出井伸之氏率いるクオンタム・エンターテイメントによるTOB(株式公開買い付け)で非上場化されているが、業績は芳しくない。ここ数年でタレントへの出演料遅配が取り沙汰され、子会社Y社では「取引先へ1カ月の支払サイトの延長を要請した」(金融関係者)といい、今年4月にはアイドルグループ「NMB48」の専用劇場が入居する自社ビルの売却を発表している。15年3月期には約32億円の最終赤字を強いられた模様だ。圧倒的なコンテンツ力によって長らくメディアを支配し続け、最近では所属お笑い芸人の又吉直樹の芥川賞受賞による“又吉ノミクス効果”に沸く吉本興業だが、その内実は決して楽ではないのだ。つい先日には一部マスコミ関係者に内部告発文書も流されている。テレビを筆頭に既存メディアの構造的な凋落に歯止めがかからないなか、一世を風靡した「吉本商法」は過渡期を迎えているのかもしれない。
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