(前略)
2015年度経済財政白書は、消費増税によって14年度の実質GDPが1.7%下押しされたと分析している。駆け込み需要の反動減で1.2%程度、税率引き上げからの物価上昇を受けた消費の減少が0.5%程度の押し下げ要因になったという。
消費増税の実施前、多くのエコノミストや経済学者は、消費増税の影響は軽微と発言していた。政府も同じ見解だったので、14年4月に消費増税は断行された。ところが、エコノミスト、経済学者、政府の見通しは大きく外れた。
エコノミスト.経済学者の力量は、事前に経済予測をさせることで分かる。もちろん百発百中はありえないが、1年先を予測をさせたら6~7割程度は当てることができないと、何のためのエコノミスト.経済学者なのかという話になる。その意味で、消費増税の影響を予測できなかったエコノミスト.経済学者は、存在価値がないといわれても仕方ないだろう。
しかし最も猛省すべきは政府である。
17年4月からの10%への消費再増税で、日本経済は一体どうなるのだろう。7月22日に公表された内閣府の中期財政試算によれば、16年度、17年度の実質経済成長率はそれぞれ1.7%、0.6%となっている。政府は、消費増税で17年度は景気が落ちると見ているいるわけだ。
14年4月の8%増税でも、政府は成長率が落ちると見ていた。14年1月20日の中期財政試算では13年度2.6%、14年度1.4%と予測していたが、実際には予測よりも悪く、13年度2.1%、14年度はマイナス0.9%だった。
経済財政白書の分析によれば、13年度の2.1%成長は、実力0.9%、駆け込み需要1.2%である。14年度のマイナス0.9%成長は、実力0.8%、駆け込み反動減1.2%、増税による消費減少0.5%である。ここでわかるのは、13年度も14年度も実力ベースの経済成長率は1%程度で、そもそも日本経済には消費増税に耐えうる体力がなかったということだ。
この白書の分析結果を機械的に16年度、17年度に当てはめてみよう。ただし増税幅は3%ではなく2%なので、駆け込み需要(およびその反動減)や増税による消費減少は13─14年度実績の3分の2としてみる。
そうすると、16年度の1.7%成長は、実力0.9%、駆け込み需要0.8%となり、17年度の0.6%成長は、実力1.7%、駆け込み反動減0.8%、消費増税による消費減少0.3%ということになる。
ここで奇妙なことがわかる。増税後の17年度の実力成長が急に1.7%と高くなることだ。13─14年度、そして16年度並みに、実力ベースを0.9%とすると、17年度の成長率はマイナス0.2%になる。これはあくまで機械的な計算だが、14年度に起きたことが再び繰り返されることは大いにあり得るだろう。
景気がよくなった時に、消費増税をして景気の腰を折るなどは愚の骨頂だ。それは消費増税の最終目標である財政再建のためにもならない。経済成長なくして財政再建なしである。
つまり、消費増税は凍結すべきだという結論に行き着く。
昨年4月の消費増税以降、多くの経済指標が伸び悩んでいる。安倍政権が再び消費増税の延期や凍結を打ち出す選択肢は果たしてあるのか。あるとすれば、どのタイミングなのか。
(後略)