記事(一部抜粋):2015年6月号掲載

経 済

地域金融再編「告発」が後押し

【情報源】

 先月号(5月号)本欄で東証1部上場のJPホールディングス前社長の告発状騒動を取り上げたが、そのほかにも有名企業や中小企業をターゲットにした告発文や怪文書が飛び交っている。大手鉄道グループや大手芸能プロダクションとその子会社、大手広告代理店の子会社などの怪文書が出回り、大手レジャー企業では納入業者との不正取引や粉飾決算、偽装表示の隠蔽が告発されている。一方、紙パルプ関連の中堅企業では「近く会社更生法を申請する」とのガセ情報の文書が同業者と思しき企業からメーンバンクや主力取引先に送り付けられ、一時は大混乱に陥ったという。こうした背景には権力抗争や不正行為への内部不満、合併・統合を巡る駆け引き、さらにはライバル企業の追い落としなど様々な思惑があるが、最近は金融機関と反社会的勢力との癒着を告発するケースも目立つ。
 某大手信用金庫では反社との取引の隠蔽とその不可解な処理の実態がマスコミなどへ文書で送られ、すでに金融当局が調査に踏み切っているという。広域暴力団系の人物が実質的に経営する風俗店グループでは、多額の融資を実行している銀行を糾弾する文書が複数の融資銀行本店へ送り付けられている。金融庁へのリークも示唆しているその文書には、銀行のモラル欠如や名義貸しによる風俗店の無許可営業、風俗店経営者による銀行支店長への接待の実態が風俗店のリストとともに記されている。
 そのほかでも「銀行にとって最大のアキレス腱であるコンプライアンスリスク絡みの告発が相次いでいる」(全国紙デスク)ようだが、こうした動きは信用リスクや事件化への懸念だけにとどまらない。とくに再編が佳境に入りつつある地域金融機関にとっては致命傷になりかねない。実際、過去には「経営統合に二の足を踏んでいた中国地区の地銀に対して、リークされた不祥事を材料に金融庁が再編を迫った」(大手地銀幹部)ことがあり、告発が再編圧力の切り札にされる可能性もある。
 それでなくても金融庁の地域金融機関へのプレッシャーは日増しに強まっている。人口減少や高齢化によって構造的な商圏の縮小に見舞われ、熾烈な金利競争で利ザヤは薄くなる一方の地域金融機関だが、追い打ちをかけそうなのが金融庁の検査方針の転換である。従来の検査は貸出債権の資産査定が中心だったが、今後は融資ビジネスの営業体制を精査、10年後も持続可能か否かを問う検査体制に変わる。融資先の成長戦略を提示させて、融資の際の“目利き”の向上を求めるというが、10年後の明確な成長シナリオを描ける地域金融機関などあるはずがない。
(後略)

 

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