(前略)
昨年6月、東京都議会で塩村文夏都議(みんなの党)が発言中、議場にセクハラやじが飛び交う騒ぎがあった。世間の批判を受け、鈴木章浩都議(自民党)が名乗り出たが、セクハラやじを飛ばしたのは鈴木氏だけではなかった。
この騒動を打ち消すかのように、お笑いタレント以上に笑える記者会見をして全国から注目を集める県議会議員が現れた。野々村竜太郎・兵庫県議(無所属)だ。300万円もの政務活動費の不正使用疑惑なので、笑っている場合ではないのだが、涙ながらのあの絶叫は、絶大なインパクトがあった。
なぜ、こうしたお粗末な地方議員が出てきてしまうのだろう。ほとんどの地方議員はそうでないと信じたいが、ここでひとつの仮説をあげてみたい。
日本の地方議員は、国際的に見て、議員一人当たりの報酬が極めて高いという現実がある。あるシンクタンクの資料(2005年)によると、年間の議員報酬は日本680万円、アメリカ65万円、ドイツ50万円、イギリス74万円、フランスほとんど無報酬、韓国240万円、スウェーデン日当のみ、スイス日当のみである。
つまり、報酬が高いため、それを目当てに議員として不適格な人までもが地方議員になっているのではないかという仮説である。
それにしても、地方分権が進んでいない日本の地方議員の報酬が高いというのは奇妙な話だ。地方分権が進んでいないのだから、地方議会の立法・条例制定にかかわる作業などタカが知れている。仕事内容と報酬が大きく乖離しているということだ。
高い報酬は欲しいが仕事はしたくない。そんな地方議員の本音を露骨に感じることがある。例えば大阪都構想に反対する議員たち。
大阪都構想が実現すると、いまの市議会議員は区議会議員になる。そして地方分権になると、必然的に仕事が増える。
大阪市議会議員の報酬は月額77.6万円で、東京都の区議会議員を含めたすべての市区町村議員よりも高い。これが都構想で見直される可能性がある。
大阪市議会がなぜ大阪都構想に反対しているのか。都政移行で報酬が下がり仕事量が増えることが真相だと邪推したくなる。
住民投票で大阪市民はどのような判断を下すだろうか。
前述したように、大阪都になっても行政サービスにはほとんど変化がない。現行の大阪市と大阪府の役割分担が変わるが、行政サービスは府か特別区のいずれかがおこなうので、住民が受ける行政サービス自体に変わりはない。
ただし、補助金や交付金などを大阪市から受けていた人のなかには、大阪都構想の実現で影響を被るケースも出てくるだろう。
構想に反対しているのは、そうした既得権者たちで、構想に賛成する人たちからは「シロアリ」と呼ばれている。
結局、大阪都構想に賛成か反対かは、いまの大阪はダメなので将来よくしようとするか、それとも現状維持のままでもいいと思うのかの違いと見ることもできる。
あるいは、大阪のあるべき姿を、他の政令市を基準として見るか、東京を基準として見るかの違いである。これは経済学でヤードスティック競争と呼ばれるものだ。例えば、身近な図書館を例に考えてみよう。
大阪市の市立図書館の人口1人当たりの蔵書数は1.5冊。政令市の平均は1.9冊なので、政令市を基準とした場合、1.9冊まで引き上げればまあ合格だろう。ところが、東京23区の区立図書館は2.7冊。東京23区並みという目線なら、まだまだということになる。
大阪市には問題があるとして、その解決のために、政令市並みを目指すか、それとも東京23区並みを目指すか。どちらの目線で見るかによって、大阪都構想の賛否も分かれるだろう。
(後略)