2月18日、民放各社で面白いニュースが流れた。NHKの籾井勝人会長が民主党議員と怒鳴り合いになったというのだ。
籾井会長はこの日、NHKの来年度の中期経営計画を説明するために民主党の部内会議に呼ばれた。
ところが、そこでいきなり蒸し返されたのが1年前の国会答弁。籾井氏が昨年、理事全員に日付のない辞表の提出を求めた件を「一般社会ではよくあること」と述べたことについて、階猛衆院議員が「間違った事実を発信した。国会答弁を撤回せよ」と迫ったのだ。
これに籾井会長が「撤回しない」と反論。会議終了後も「失礼だ」「あたなこそ」と罵りあう泥仕合になった。
この民主党とNHK会長の怒鳴り合いは、情けないくらい民主党に分が悪い。
①議題になっていた中期経営計画とは関係ない質問ばかりを浴びせ、いわばだまし討ちにした。
②NHK会長の国会での発言を、民主党の部内会議で撤回せよと要求するのは無理難題。国会での発言の是非は国会で議論すべきとの大原則から逸脱している。
③部内会議とはいえ、会議終了後の延長戦はやってはいけない。
④自党の部内会議に呼び出しておいて吊るし上げるのは非常識。
これは手続き論からいっても、民主党の完全な戦略ミスである。
NHKが不偏不党でなく自公政権寄りだと批判したいなら、具体的に指摘しなければいけない。そのためには、自党の部内会議ではなく、国会の場で、国会の手続きのなかで糾していく必要がある。民主党はそれができないので自党の部内会議で鬱憤晴らしをした、と批判されても仕方がないだろう。
要するに、民主党国会議員はロジ(手続)とサブ(内容)の区別ができない“ダメな人”の典型である。
サブでNHKに苦言を呈するためにはロジがきちんとしていないといけない。「ロジはサブを制する」という鉄則を民主党は知らないようだ。この鉄則を知らない人ほど、サブの中身がなく、期待外れのことが多いが、いまの民主党はまさにそうなっている。
民主党がおかしいのは周知のこととはいえ、国会審議を聞いていても本当に情けなくなる。
国会審議は良くも悪くも世の中を映し出す鏡であり、与野党の出来不出来もよくわかる。2月4日の衆議院予算委員会では、民主党の相も変わらぬ外交・経済オンチぶりが露呈した。
午前、辻元清美政調会長代理が「有志連合」について、そのメンバー国が米国国務省のホームページに掲載されており、日本がその中に入っていることを指摘した。これに対し、岸田文雄外相は「そのホームページは米国の判断でつくられている」としたうえで、軍事行動を伴う狭義の有志連合と、非軍事強力による広義の有志連合があり、日本は後者であると説明した。
ここまではいい。問題はその後だ。辻元氏は「日本は人道支援しているから世界もわかってくれていると誤解している」と日本政府の対応のまずさの責任にしようとした。この論法は、一部の日本のマスコミもとっているもので、後藤健二さんが殺害された後の2月1日の官房長官記者会見でも、記者から「首相の中東訪問が誤解されたのでは?」という質問がなされている。
しかしISIL(いわゆるイスラム国)が1月20日にインターネット上で公開した動画をみれば、イスラム国自身、日本の支援が非軍事的なものであることを明確に認識していたことがわかる。だから記者に問われた菅義偉官房長官は「誤解ではなく、意図したもの」と答え、「テロに対して正当性は全くないじゃないですか。こんな卑劣極まりないテロをやって!」と強い口調で怒りを露にしている。
そうした経緯があるにもかかわらず、辻本氏は政府の対応を批判。安倍晋三首相から、1月20日の動画の内容を丁寧に説明されたうえで、「辻元さんは理解してないかもしれないが、ISILは非軍事的目的だと理解していた」と見事に切り返されていた。
(後略)