トヨタ自動車がいよいよ“攻め”に転じ始めた。昨年末、部品メーカーの大規模再編に踏み切って世界の自動車業界に衝撃を走らせ、年明けには水素で走る燃料電池自動車(FCV)の特許5680件の無償提供を発表、さらに2013年度から凍結していた工場新設を解除する方針を打ち出した。トヨタの次なる仕掛けに注目が集まっている。
グループ再編ではシートをトヨタ紡織、トヨタとデンソーのブレーキ事業とトヨタのマニュアル・トランスミッションをアイシン精機にそれぞれ統合し、ディーゼルエンジンは豊田自動織機に一本化。さらに、アイシンによるシロキ工業の完全子会社化も発表した。今回の再編の対象は8社で総売上高10兆円、自動車部品世界トップの独ボッシュを優に超える規模の事業を入れ替えるという前例のない大改革である。
トヨタの15年3月期は、好調な海外市場や円安効果によって純利益が2兆円を突破する見込みで、世界販売台数は初めて1000万台を超えるなど過去最高の業績が見込まれる。ところが、豊田章男社長の危機感は強い。国内市場が縮む一方で、海外勢が中国など新興国でシェアを伸ばし、独フォルクスワーゲンがトヨタを猛追。さらに、自動運転ではITの巨人・米グーグルが参入、日本に技術開発拠点を設ける米アップルも「自動車分野への進出を目論んでいる」(大手IT幹部)など、自動車業界は規模や質で異次元の競争に突入しつつある。トヨタが、円安による利益の嵩上げは期待せず、いかなる環境下でも利益の出せる事業グループの構築に躍起になるのも頷ける。
ただし、今回のトヨタの再編劇はステアリングや電子部品などの重要機能はグループ内に分散したまま、主導権も依然として曖昧なことで「開発製造分野の集約にすぎない」(業界関係者)との見方は多い。だとすれば、ステアリング・駆動系大手のジェイテクトや操作機器の東海理化電機製作所なども絡めた次なる再編の行方が焦点となる。もちろん、トヨタだけでなく、日産自動車、ホンダ系列の動きからも目が離せない。
こうした1次サプライヤーの再編・集約は、当然のごとく2次以下のサプライヤーにも影響を及ぼす。実は、一連のグループ再編は「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」戦略の一環として位置づけられる。
(後略)