小誌2014年8月号で報じた、ブルネイ国王の甥と称する人物の一派による詐欺疑惑。同記事では日本の警察当局による立件の可能性を指摘したが、今度はついにブルネイの警察当局が動き出した模様だ。
14年11月30日、さる関係者のもとに1通のメールが送られてきた。
差出人は王立ブルネイ警察隊の犯罪捜査局、O警視補(Assistant Superintendent of Police)。
《私たちは最近、在日本(ブルネイ)大使館から、pgバーリンと、高嶋貞幹による忌まわしい犯罪(climes)の被害者がいることを知らされました》
そんな書き出しで始まるメールで、O警視補は、被害者たちの身元や詳しい被害状況、関連する資料の提供など捜査への協力を求めている。
では、ここで問題となっているPgバーリンらによる疑惑の中身をざっとおさらいしておこう。
主な案件は2つ。ブルネイ投資庁が所有する東京・代官山の1700平米の土地の売買にかかわる詐欺疑惑と、ブルネイでの住宅建設をダシにした詐欺疑惑である。
前者の土地は、もともとはブルネイの有力王族の一人が日本人妻(ブルネイは一夫多妻が認められている。日本の愛人ということではない)を住まわせる邸宅を建てるために購入。その後、事情があって建設が頓挫、長年にわたって更地のままになっていたものだ。
この都心の一等地の売却話を持ち歩いていたのが、Pgバーリンと高梨貞幹・勝男という日本人兄弟。バーリンらは「仲介してくれたら多額の手数料を払う」と不動産業者などに持ちかけ、業者が購入の意思を示すと、「ブルネイ最高裁判所が発行しする『販売証明書』(後に偽造であることが発覚)を入手する必要がある」などと称して金銭を詐取したとされる。
もう一つの案件が、ブルネイ国内の住宅建設に関わる詐欺疑惑。「ブルネイの庶民(多くが水上生活者)のために陸上にきちんとした住宅を建設する大規模事業を推進する。その事業に参加させてやる」と謳い、日本の建設業者や投資会社の社長などから、手数料や建設許可に必要だなどの名目でカネを騙しとった疑いが持たれている。
実は前回の記事で紹介したこれら2つの案件以外にも、新たな疑惑を本誌はキャッチしている。それは日本人の投資家が組成した「ブルネイ開発事業投資ファンド」の資金を騙しとっていたのではないかという疑惑だ。
そのファンドの「出資者リスト」なるものが存在する。実はこれもブルネイ当局が求めている「cooperation(協力)」の中身そのものである。
そのリストには57の個人名が記されている。住所、電話番号、投資した口数と金額。ファンドは1口50万円。リストを見ると1口の者もいれば、複数口の者もいる。一番高額なのは栃木県に住む男性の20口1000万円。57名の合計は1億50万円で、これは2007年9月1日から同年11月30日までに契約された分のようである。
ここで非常に気になる記述がリストなかにあるので特筆しておこう。備考欄に共通した文言が記されているのだ。
《新規・アルマ会員》
いったい、これは何を意味するのか?
(後略)