安倍晋三首相の“身勝手解散”による年末の総選挙は自公政権の圧勝に終わり、安倍政権の経済政策「アベノミクス」は継続されることになった。
異次元の金融緩和によってインフレを起こして円安に誘導、公共事業を乱発するアベノミクスが、それまで総悲観論、萎縮均衡に陥っていた企業や消費者の行動に変化をもたらし、円高と資産デフレを是正したことは間違いない。
しかし、アベノミクスによって日本経済が順調に回復への道を辿っているわけではない。過去1年間をみると、GDPのプラス成長は消費増税前の駆け込み需要があった2014年1~3月期のみであり、13年10月から景気は一向に回復していない。「物価上昇」も円安効果であり、「円安」は金融緩和ではなく海外要因、「株高」は円安によるところが大きい。つまり、決して異次元緩和が主役となって円安、株高をつくり出したわけではないということだ。
第3の矢である成長戦略も遅々として進まない。それもそのはず、安倍政権は経団連や官僚など既得権益勢力が後ろ盾であり、これでは大胆な規制改革による経済成長など望むべくもない。大都市圏と地方、大手企業と中小企業、富裕層と低中所得者の格差が拡大していることも論を俟たない。
(中略)
それでは、アベノミクスに代わる即効性のある政策があるのかといえば、残念ながら見当たらない。徹底したムダ削減や官僚システム改革による経済成長、抜本的な産業構造の転換という本筋の手法では追いつかない事態に陥り、激しい副作用覚悟でアベノミクスという劇薬を選択せざるを得ない現実こそが最大の危機なのだ。
(後略)