都心の一等地、港区立赤坂小学校に程近いマンションの一室に、振り込め詐欺グループの拠点がある。首謀者はOという30代半ばの男。運転手付きの黒い高級ミニバンに乗り込んで、マンションからどこかへ走り去る姿が頻繁に目撃されている。
少し前、ノンフィクション作家の溝口敦が書いた『詐欺の帝王』(文春新書)という本が話題になった。大手広告代理店・電通の元社員で、その後ヤミ金や振り込め詐欺などの一大犯罪集団を率いることになる人物に直接取材して書かれた同書は、現代の詐欺グループの生成史ともいえる内容になっている。そこに登場する帝王(同書では本藤彰という仮名になっている)はピーク時1300人の“従業員”を抱えていたという。
Oはそれには遠く及ばないものの、現在50人ほどの“部下”を率いているという。大半が20代の若者だ。
それほど大物でもない詐欺師といえるが、実はこのO、2008年に発覚し世間を騒がせた「大光事件」の首謀者であるコンサルタント会社社長の親族なのである。
大光事件とは、日本を代表する大企業・キヤノンが大分県に工場を建設した際に、建設工事を請け負った鹿島が巨額の裏金を大分市のコンサルタント会社である大光に支払っていたというもの。大光の社長はキヤノンの御手洗冨士夫会長(当時)と昵懇の関係にあり、鹿島に工事の受注を斡旋した見返りに鹿島から裏金を受け取っていた。
(後略)