記事(一部抜粋):2014年11月号掲載

経 済

GPIF改革「最大の目的」は米国債の買い支え

【証券マン・オフレコ座談会】

(前略)
B FRBはQEの段階的な縮小を進めてきたが、10月で終了する予定。それがマーケットの波乱要因だと?
A 米国の景気回復が本物で、世界経済の牽引役になるなら波乱にはならないけど、時期尚早だとしたら、やっかいなことになる。
C そのあたりは米国もわかっていて、建前は縮小と言いつつ、実際は、中国やロシアが米国債を大量に売却しようとすると、他国の名義を借りて米国債を買い支えているらしい。だから、それほど心配はいらないと思うよ。
B でも財政が逼迫している米国が、湯水のごとくQEを続けられるはずがない。次の手が必要なのでは?
A 次の手というより“奥の手”が、いま話題のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用比率引き上げじゃないかな。
B 130兆円の公的年金を保有するGPIFの株式運用比率の引き上げ?
C 大手紙などは「国内株式運用比率の目安を12%から20%台半ばに引き上げる方向で調整に入った」と書いている。国内株は、目安の12%から上下6%分の幅で運用するのが基本ルールで、6月末時点では17%。仮にこれを25%まで高めると、単純計算で約8兆円の買い需要が発生する。
B 少子高齢化の日本では貰う者ばかりが増えて払う者が減るため、年金制度は破綻しかねないと危惧されている。それに超低金利の日本国債では運用益が確保できないから、リスクがあっても株式比率は高めざるを得ないのでは?
A それは建前で、GPIF改革の最大の目的は国内の株式や債券ではなく、外国の債券(米国債)比率の引き上げじゃないかな。
C 大手紙は、「外国債券と外国株式は合計で今の23%から30%へ引き上げる方向で検討」と書いているね。
B そうなるとどのくらいの買い需要が発生するの?
C 単純計算で約9兆円になるから、国内株式の買い需要より多い。
B 3分の2を占める日本国債を筆頭に国内比率が高すぎるから、止むを得ないのかな。Cさん、他国の公的資金の運用の比率はどうなっているの?
C 米国最大の年金基金の「カルパース」の国内債券の運用比率は26%で、ヨーロッパ最大の年金基金「ABPオランダ」は44%と日本よりかなり低い。しかし、株式まで含めた国内比率で見ると日本は米国を10%ほど上回るけど、ヨーロッパを10%以上下回っている。世界と比べると、国内債券の比率は高いが、国内比率は高くない。
(後略)

 

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