記事(一部抜粋):2014年8月掲載

政 治

消費税増税の影響は甚大、それでもやり抜く再増税

【霞が関コンフィデンシャル】

(前略)
 消費と設備投資の他にも、気になる統計が出ている。7月10日に発表された景気ウォッチャー調査だ。
 内閣府の説明資料には《6月の現状判断DIは、前月比2.6ポイント上昇の47.7となり、2カ月連続で上昇した》《景気は緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の影響も薄れつつある》と書かれていたため、その部分だけをノー天気に引用した報道が多かった。しかし実際はどうかといえば、増税直後の4月に大きく落ち込み、その後の2カ月間は上昇したものの、以前の水準には戻っていない。この「以前の水準には戻っていない」という点がマスコミ報道では欠落している。
 直前の月に比べて上昇しているからといって、景気がよくなっているとは限らない。これは覚えておいたほうがいい。対前月比(あるいは前期比)の数字だけではなく、対前年同月比(前年同期比)の数字も重要なのだ。
 今年の年末には、消費税の再増税についての判断をおこなうことになっている。7─9月期のGDPが判断材料になるというが、4─6月期と比べてプラス(前期比)だから再増税OKというのではなく、昨年7─9月期と比べてプラス(前年同期比)になっていることが最低条件だ。
 もっとも、消費税再増税は民主党政権時代に法律が通っており、政治的には「決着済み」と言える。つまり、既定路線である再増税をひっくり返すには、消費税増税凍結法など新たな法律を国会で通すなど、よほどのことが起きなければならないということだ。
 すでに、「増税しないと日本国債が暴落しかねない」と発言している与党政治家が何人もいるが、増税の影響で景気が落ち込めば、彼らはそれを逆手にとって予算の増額を求めてくるだろう。要するに、彼らは「オレのところに予算を回せ」と言っているにすぎない。政治家の発言に経済的な意味はないと理解すべきだ。
 したがって、与党は再増税をなんとしてでもやり遂げるだろう。そして、再増税の一方で補正予算の大盤振る舞いだ。
 官僚もそのあたりの事情を心得ているので、揉めそうな通常国会を利用する。集団的自衛権を行使するための自衛隊法等の法改正を、秋の臨時国会ではなく年明けの通常国会でおこなうことにしたのは、そのほうが国会審議がやりやすいと官僚が考えたからだろう。
 消費税の再増税が決断されると、年明けは景気問題で国会が騒々しくなる。争点が分散するので、集団的自衛権関連法案は通りやすくなると外務・防衛官僚は思っているはずだ。また、集団的自衛権関連法案が通常国会で審議されれば、消費税増税凍結法案のような面倒なものが国会に出てくることもないだろうという財務省の思惑もある。
 いずれにしても、集団的自衛権関連法案が通常国会に提出されたほうが、官僚としては都合がいいわけだ。
 霞が関の人事も、消費税再増税に向けて着々と進んでいる。
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】