活字離れ、本離れによる出版不況が叫ばれて久しい。2013年の書籍・雑誌の売上高は約1兆7700億円で9年連続の減少、この15年余りでなんと4割近くも減っている。インターネットにメディアの主導権を奪われ、期待された電子書籍も冴えない。ここ数年、休刊に追い込まれる雑誌は後を絶たず、老舗や中小クラスの出版社の経営難の噂が飛び交い、断続的に倒産も発生している。出版業界の解体的縮小は加速する一方だ。
昨年10月の徳間書店とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の資本・業務提携に続いて、今年5月には出版大手のKADOKAWAと「ニコニコ動画」を手がけるドワンゴが経営統合を発表、老舗出版社と新興企業の連携がクローズアップされている。ただ、この異色の大型再編も先行きは不透明だ。新会社の狙いは、米アマゾンなどIT大手の対抗軸としてコンテンツ流通の主導権を確保すること。ところが統合会社の売上規模は2000億円に届かず、アマゾンやグーグルを敵に回すようならグローバルな販売網から締め出されないとも限らない。将来的にはKADOKAWAとドワンゴの経営権争いも予想されるなど前途は多難といえそうだ。
次なる再編の目玉として取り沙汰されているのが出版最大手・講談社と楽天の経営統合説。たしかに、楽天はカナダの電子書籍「コボ」やスペインの動画配信「ウアキ・ティーヴィー」など、相次いで海外のコンテンツ企業を買収している。講談社の野間省伸社長もデジタル事業の旗振り役を担ってきた実績があり、楽天の三木谷浩史社長とは個人的にも親密な関係にある。ところが、三木谷氏には2005年にTBS買収に乗り出したものの様々なバッシングを受けて撤退を強いられたという大手メディア買収に苦い経験がある。講談社もマスコミ特有のエリート意識が強く、楽天との企業カルチャーの融合には疑問符がつき、現段階ではスンナリと経営統合が実現すると見る向きは少ない。
それではこの統合説、ガセ情報かといえばそうとも言い切れない。「野間社長はアライアンスに積極的で、同業や異業種などあらゆる選択肢を模索している。実際、講談社と楽天の幹部も接触を図っている」(講談社幹部)というのだ。一方の楽天の三木谷氏も活字や放送のカテゴリーを超えたネットメディア戦略の構築を掲げている。
(後略)