記事(一部抜粋):2014年6月号掲載

社会・文化

高知県警を追及する“平成の龍馬”

舞い込む内部告発文書

 静岡地裁の再審開始決定で元死刑囚の袴田巌氏が釈放されて2カ月経つが、これも冤罪ではないかと指摘されている案件がある。
 2006年3月に高知市(事故当時は吾川郡春野町)で発生した白バイ警察官の死亡事故。
 道路左側のレストラン駐車場から出てきたスクールバスが、国道56号線の交差点に道路外から右折横断進入しようとしたところ、高知県警察交通機動隊の巡査長が運転する白バイと衝突し、白バイに乗っていた巡査長(当時26歳)が胸部大動脈破裂で死亡した。バスの運転手が安全確認をしなかっとして逮捕・起訴されたが、運転手は「バスは停止していた」と一貫して主張。「バスは動いていて、急ブレーキをかけた」とする警察・検察側の主張には疑義があり、提出された証拠のスリップ痕が捏造された疑いがあると反論したが、08年8月に禁錮1年4カ月の刑が確定して服役。10年2月に出所し、その後再審請求をしているという“事件”である。
 一方、この「白バイ事件」をめぐっては、高知市在住の土地改良鑑定士、小松滿裕氏が12年11月、“口封じ”(?)のため逮捕・起訴されるという事件も起きている。
 この小松氏は、警察がスリップ痕を捏造していた疑いがあることを知って運転手の冤罪を確信、監査請求や公文書開示請求などをおこなってきた人物で、逮捕容疑は加藤晃久県警本部長(当時)宅の周囲で「加藤、恥を知れ」などと歌い、警官から制止されると大声を出して近隣に迷惑をかけたというもの(小松氏は「制止などなかった。加藤本部長をなじる『よさこい節』を歌って通行しただけ」と主張している)。今年3月、小松氏は高知簡易裁判所で有罪判決を受けている(小松氏は控訴)。
 白バイ事件の再審請求の行方が気になるところではあるが、さらに興味深いのが、軽犯罪法違反で逮捕され有罪判決まで受けた小松氏のもとに、高知県警からの内部告発と思われる文書が、この白バイ事件以外のものを含めてこれまでに数十通も届けられているという事実だ。
「最初(2011年9月)に文書を読んだとき、どうして私のようなものにそんなものが届くのかと不審に思いました。ひょっとして私を陥れようとしているのか、そう思ったりもしたのですが、『よし、思い切って応えてやろう』と決めたのです」
 最初に送られてきた文書には、11年6月に起きた殺人事件で逮捕された女性留置人に対し、留置管理部護送主任の巡査部長が猥褻行為を働いていることが記されていた。
《平成の坂本龍馬、小松滿裕の日頃のご活躍に敬意を表します》
 こんな書き出しで始まる文書には次のような驚くべき内容が書き込まれていたのだ(イニシャルは原文では実名)。
《もうひとつは、現高知南警察署会計課巡査部長Kによる女性留置人に対する強制わいせつ事件等。
 本件は本年6月7日、高知市小石町209番地、市営南改良住宅、においてT(36才)が夫であるM(46才)に火をつけ殺した殺人、現住建造物放火事件である。当時、高知南警察署留置管理部護送主任であった巡査部長Kは、Tを護送する際、Tが「私、死刑になる。」と発言したことにつけいり、Tの手を両手で包み込み「俺の言うことを聞けば無罪になる、今までの供述を覆すために精神病者を演出し、供述にあいまいさを作りなさい、そうすれば事件の責任能力は裁判で問われることはなく無罪となり釈放される」、と教えた》《その見返りに釈放後関係を持つための連絡手段として携帯電話番号を教えること、また留置場等で身体を触らせることを約束させられたことが判明した》《この事実を知るのは検察庁と……》
 まさに驚きの内容。小松氏がこう述懐する。
(後略)

 

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