モバイル端末の急速な普及によって、光回線のビジネスモデルが大きく揺らいでいるプロバイダー(インターネット接続事業者)業界で再編気運が高まっている。
なかでも大手電機メーカー系のプロバイダーは、親会社の業績不振もあって有力な身売り対象とされてきたが、今年3月、NECが業界3位のNECビッグローブの売却に踏み切ったことから、再編の火ブタが切られた格好。業界5位のSo net(ソネット)は、「親会社のソニーが、ソネット保有のDeNAなどの株式売却で約540億円の利益を得たことで、ソネット売却のタイミングを狙っている」(金融関係者)ようで、業界7位の富士通系のニフティも売却に向けて水面下で動き始めているという。たしかに、富士通はパソコン事業の軸足を法人向けへ移したことからニフティとの相乗効果は薄らぎ、プロバイダー事業を続けるメリットは小さくなっている。
ここにきて電機メーカー系プロバイダーの受け皿として注目されているのが、国内投資ファンドの日本産業パートナーズ。これまで国内信販(現KCカード)や青汁のキューサイ、すかいらーくなどの実績を持つ同ファンドだが、今年1月にNECビッグローブ、2月にはソニーのパソコン事業の買収を立て続けに発表、一躍、エレクトロニクス業界再編のキーパーソンとして浮上してきた。ある大手投資ファンド幹部は、「NECビッグローブに続いてニフティも手中に収め、プロバイダー事業とモバイルを融合させた割安な新サービスによって企業価値を高める戦略を描いているのではないか」と日本産業パートナーズの狙いを読む。さらに、ソニーのソネットも取り込んで電機メーカー系3社の大統合を視野に入れる可能性もある。そうなれば加入者数シェアは20%を超え、2位のヤフーBB!(シェア9.3%)を抜き、業界トップのNTT系のOCN(同25.3%)に迫る勢力になるだけに、今後の日本産業パートナーズの動きから目が離せない。
(後略)