公益財団法人といえば、その名の通り公益性の高い財団にのみ認められる呼称である。行政庁(内閣総理大臣もしくは都道府県知事)が厳しい公益認定基準に照らしてチェックし、認定すれば、晴れて公益財団法人を名乗る事ができ、優遇税制の対象となる。
いまからちょうど2年前の2012年2月に設立され、その後、公益財団法人として認定された団体がある。「日本防犯安全振興財団」というのがそれ。事業目的に「防犯に関する知識・思想の普及啓蒙を図ることで防犯環境づくりに貢献し、犯罪のない安全で安心な国民生活の実現に寄与すること」とあり、同財団はその目的に沿う形で目下、隔月のペースでセミナーを開いている。
セミナーの講師陣をみると、目につくのは警視庁各警察署の防犯係の現役警察官。城東署、深川署、あるいは蔵前署のいずれも生活安全課防犯係の警察官が講師となっている。現役の警察官が講演するのは小学校のPTAがときおり開催する安全教室くらいなもので、通常は講師など引き受けない。安全・防犯をテーマに講演中に事件や重大事故が発生しようものなら、それこそ一大事だからである。
にもかかわらず新設間もないこの財団が頻繁に現役の警察官を講師として呼べるのはなぜなのかといえば、後藤恒男という財団の創設者と警察当局の「信頼関係」がなせる業か。この後藤氏、本業では「ポータ工業」という会社の代表者だが、同社は警察官が使う各種「用具」の製造をほぼ独占的に手掛けるメーカーで、一般市民には知られていないが、警察関係者の間でその名は知れ渡っている。
ちなみに、ポータ工業がつくっている製品をざっと挙げると——。
(中略)
このポータ工業、後藤氏が43年も前にひとりで立ち上げた会社だが、当初から警察用品を専門に製造していたわけではない。1991年にトカレフ対応防弾衣を開発し、以来、その優れたアイデアと生産性を武器に、次々と警察用の備品を手がけるようになったという。いまや警察御用達のメーカーとしてその名が轟いている。
そのような会社の代表が創設した財団ゆえに、現役の警察官もほとんど躊躇なく、同財団が主催するセミナーの講師を引き受けるのである。
公益財団の認定を得るために、後藤氏は警察ばかりか特許庁などにも大いに働きかけたようで(ポータ工業は40件の特許・実用新案を持つ)、「費用」もそれなりにかかったようだ。ところが後藤氏が苦労して認定を得たこの公益財団法人に、猛烈なアプローチをしかけている政治家がいるという。
(後略)