記事(一部抜粋):2014年1月号掲載

社会・文化

病院と葬儀会社の陰微な関係

遺体を「紹介」するたびにバックリベート

 2013年11月半ば、都内に本部を置く某右翼団体の幹部とその部下2人が、強要容疑で警視庁西新井署に逮捕され、法律で定められた目一杯の拘留期間、その身柄を留め置かれた。部下2人は不起訴になったものの、幹部には30万円の罰金刑が課せられた。新聞には一切載らない、つまり警察発表されることのない小さな事件である。
 右翼団体幹部らから強要を受けたとされるのは、東京・足立区のH会。H会は一般財団法人の形態をとっているが、傘下に複数の病院と医療施設を擁している。中核施設として位置づけられる「総合病院」は、ベッド数340床で、東京都災害拠点病院、厚生労働省臨床研修病院に指定され、年間4億4600万円の補助金を国および東京都から受けていることから分かるように、極めて公共性の高い病院だ。
 右翼団体関係者がいう。
 「H会と傘下の総合病院に関して、看過できない問題があり、理事長との面談を求めたところ、財団法人の理事で総務局長と財務局長を名乗る人物が対応しました。で、名刺(右翼団体の名前が入っている)を渡したら、その場で逮捕です。20日以上も留置場に入れられて、すぐに罰金刑。とりつく島のない展開でした」
 H会から相談を受けていた西新井署が、事前に網を張っており、右翼団体幹部が用件を切り出す前に刑事が飛び込んできたというのだが、では、彼らがH会に質そうとした問題とは、どのようなものだったのか。
 この逮捕劇の1年あまり前、埼玉県川口市の葬儀業A社が倒産した。その後、A社はH会に対して「保証金返還請求」の民事裁判を提起したが、その主張がほとんど棄却されるかたちでほどなく和解が成立したという。
 ここに、いくつかの契約書類の複写がある。『指定葬祭業者受託保証金契約書』『搬送業務に伴う車両管理等に関する覚書』『遺体搬送に関わる仕様書』『寝台車による搬送業務及び霊安室管理業務に関する覚書』……。
(中略)
 A社の関係者がいう。
 「病院からは頻繁に死体が出ます。H会と特殊な契約を結ぶことで、その死体を独占的に扱うことができる。つまりH会お抱えの葬儀屋になるわけです。この契約については絶対に他言してはならないときつくいわれていました。なぜならH会は、この契約によって、帳簿に載らないような裏ガネをつくっていたからです」(同)
 前掲の契約書類によると、契約は5年ごとに更新され、その都度保証金なるものが発生している。その額2000万円!
 「それでも病院から出る死体の葬儀を独占的に扱えるなら、決して高くはない。それに保証金を支払ったら、絶対に他言はしなくなります。中途で解約されても保証金は絶対に返ってこないのですから」(同)
 A社は更新を3回しているので、計6000万円を支払ったことになる。ちなみに、前述した保証金返還請求訴訟は、この6000万円の返還を求めたものである。
 お抱えとなった葬儀業者がH会に支払うのは、この保証金だけではない。
 「紹介手数料です。つまり病院から死体を『紹介』されるたびにリベートが発生するのです。保証金と同じようにこれも帳簿には掲載されません」(同)
 紹介料の具体的な金額は次の通りだ。
・葬儀施行=祭壇価格の35%
・生保火葬=4万円
・一般火葬=2万円
・部分火葬、遺体搬送=5000円
 仮に祭壇の価格が100万円だとすると、35万円の紹介料が発生するということだが、注目すべきは、このなかの「生保火葬」だ。
(後略)

 

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