記事(一部抜粋):2013年12月号掲載

社会・文化

食い物にされた有力第2地銀

頭取が暴力団に弱味を握られ……

 西日本のX県を本拠とするK銀行は、同県内では、県指定金融機関である某銀行に次ぐ規模を誇る有力第2地銀。数年前に隣県の第2地銀と金融持株会社を設立して、現在はその完全子会社となっている。
 ちなみにこのK銀行、行員の不祥事が頻発することで有名で、それは業務改善命令を受けた数の多さからもうかがえる。
 ところで昨今、銀行と暴力団などいわゆる反社会的勢力との関係がクローズアップされている。いうまでもなく、みずほ銀行がオリエントコーポレーションとの提携ローンを通じて多数の暴力団関係者に融資していたことが発覚したのがきっかけ。その後、他のメガバンクや金融機関が、反社(反社会的勢力)への融資があることを口を揃えてカミングアウトしたため、「銀行(他の金融機関も)と反社の関係」に改めて注目が集まっているわけだ。
 実はK銀行についても、反社との深い関係が取りざたされている。しかもK銀行の資金が、反社のなかで最大の勢力を誇るY組、その執行部の財政を支える幹の1つになっているというから穏やかではない。事実とすれば看過できない話である。
 西日本のZ県にS社というパチンコホールの運営を主業とする会社がある。地元Z県のみならず、大阪、東京、神奈川、千葉、埼玉などにも出店しており、業界ではそれなりに名前の通っている存在。前期のグループ売上高はおよそ3000億円にのぼるというから、規模でいえば1部上場クラスの大企業。近頃はプロスポーツチームのスポンサーになっているほか、文化事業にも手を広げている。
 S社の本社は、Z県の県庁所在地・Z市にある。同市の表玄関であるZ駅の向かいに立つのが同社の本社ビルだ。このビル、もともとはZ県などが出資するいわゆる第3セクター形式で運営され、Z市のランドマークとして親しまれていたが、老朽化してテナントが集まらなくなり、同第3セクターが倒産、競売にかけられたものだ。それを落札したのがS社で、2003年のことである。
 このとき、ビルの落札資金からその後の改築資金にいたるまでのファイナンスを担ったのがK銀行である。
 Z県の表玄関に立つかつてのランドマークの再興——となれば資金調達は地元の金融機関というのが相場だろう。しかしS社は海を隔てたX県に本店のあるK銀行を選んだ。
 同ビルの登記簿謄本をみると、03年にそれまで同ビルについていたすべての権利関係が一掃され、K銀行が新たに20億円の根抵当権を設定したことが分かる。さらに、その約4カ月後には根抵当の極度額は倍額に設定し直され、現在に至っている。
 「そのときまでS社なるパチンコホールの運営会社と、ウチは一切関係がありませんでした。Z県は遠くはないが、それでも海を隔てている。業種も勘案すれば本来なら繋がりにくい相手です。ではなぜ、いきなり極度額40億円という大きな融資をしたのか。それは、元頭取の強い意向があったからです」(K銀行元行員)
 それまでなんの取引もなく、融資先としては常に注意を必要とする娯楽業を主業とし、しかも県外に本社のあるS社に、いくらしっかりとした担保(駅前の1等地)があるといっても、いきなり極度額40億円のファイナンスをつけるというのは、確かに珍しいケースといえよう。しかし、そこには元頭取の強い意向があったというのだ。
 「元頭取のO氏は、積極営業でK銀行の業績を伸ばした人です。しかし一方で無理な融資で不良債権もたくさんつくった。まあ派手な頭取でした」(同)
 そんな頭取なら、県外企業に積極的に融資しても不思議はないとも思えるが、「実は込み入った事情があった」と語るのは、Y組の直参組織、X県に本拠のあるW組の元組員である。
 「O頭取はプライベートでも積極的でね。それが縁でW組が食いついた結果が、S社への融資なんですよ。それがいまでも続いていることが、W組がY組本家で格上の扱いになっている理由なんです」
 いったい、どういうことか。
(後略)

 

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