(前略)
B 先ほどの建設会社の話だけど、人工代が跳ね上がっても、公共事業の赤字受注はほとんどないだろうから、国土強靭化政策で仕事は増えるんじゃないの?
C 増えることは間違いない。ただし利益が出るかどうかが問題。
B 公共事業で赤字受注はないんじゃないの?
C それは元請だけの話。どこどこの大きなプロジェクトの現場で事故が起きて、誰々が死んだというニュースがしょっちゅう流れるけど、事故に遭った作業員のほとんどは下請け会社、いわゆる協力会社の社員。元請の大手ゼネコンは公共事業の入札に参加して落札したら、マージンを抜いて下請けに丸投げだから。
B 中小も入札に参加すれば?
A 公共工事の入札に参加するにはあらかじめ、最寄りの役所で経審(経営事項審査)を受けることが義務づけられている。
B 経審って?
A 自己資本額や利益額の平均などを数値化したものをチェックすること。その経営状況評点がよくないと、いくら最安値の入札価格を入れても、逆転されてしまうシステムになっている。
B それじゃ、大手ゼネコンに有利じゃない?
C つけ加えるなら、公共工事の実績にも評価点がつく。それは地方自治体によっても違うけど、A(優秀)、B(良好)、C(普通)、D(やや不良)、E(不良)の5段階にランクづけされる。先ほどのケースと逆で、Aと評価されると、最安値でなくとも逆転受注することができる。
A 最寄りの役所の建設事務所に行けば、閲覧申請して誰でも見ることができる。ところが、閲覧して驚いたのは、中小建設会社の多くが債務超過であること。これでは公共事業の入札に参加してもムダだから、元請の下請けに甘んじるしかない。中間マージンが引かれているから、人工代や自分のわずかな役員報酬を差し引いたら最終赤字ということになる。さらにアベノミクスによる円安は材料価格を1割近く引き上げる結果となって中小の経営を直撃している。
C 先日、中小建設会社の社長とある会で知り合った際、「自民党政権に戻ってよくなりましたか?」と聞いたら「あんたも随分嫌な質問をするね」と怒っていたよ。
B よくなるに決まってるって?
C その逆。自民党に先祖返りしたから建設会社が潤うと思われるのは心外だというんだ。自民党は大手ゼネコン重視だから昔から嫌いだといってたよ。
B 話を変えるけど、トヨタが11月6日に発表した中間決算は、営業利益が前年同期比81%増の1兆2554億円と、上半期としては過去2番目の水準になった。これはやはり、アベノミクスによる円安効果が大きいのだろうか?
C それもあることはある。しかしトヨタは、為替に左右されない企業体質づくりに邁進している。輸出比率は30%から23%に低下し、原価率も調達部品の値下げなどにより87%から82%に引き下げられている。
A トヨタは今年「TNGA」という資料を、系列下請け会社に配布した。
B TNGAって?
A 「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」の略で、2015年から発売する新車に適用する設計手法のこと。
B 設計をどうするの?
A 簡単にいうと、今まで車種によって車台や部品がバラバラだったものを、最小限に共通化してゆくというものだ。
B 少品種大量生産ってこと?
A 部品に関してはね。この共通化によって、部品の調達コストを2〜3割引き下げるのが狙いだ。
B すると部品の種類は大幅に少なくなるものの、1種類当たりの生産量は大きく増える?
A そのとおり。たとえばラジエーターなら現在100種類程度調達しているものが、共通化によって20種類くらいになる1方で、1種類当たりの量は、モノによっては今までの10倍以上になる。
B しかし、10倍以上の生産に部品メーカーは対応できるんだろうか?
C だから対応できるよう、2次、3次下請け会社が合併したりM&Aに踏み切るんじゃないかといわれている。
(後略)