(前略)
B ところで安倍首相は消費増税の延期を考えているようだけど、株価への影響はどうなの? 延期は株価にマイナスという声があるけど。
C いろんな会社にヒアリングをしていてわかるのは、特に住宅業界に消費増税前の駆け込み需要が入っていること。
A 米国のサブプライムローンを見れば明らかなように、住宅が売れれば家具や電化製品も売れる。いい悪いは別にして、それが米国経済を押し上げたのは事実。同様に消費増税も、いい悪いは別にして住宅の駆け込み買いによる景気引き上げ効果があることは事実だ。
B 安倍首相の延期発言は景気の上昇に水を差すと?
A 目先的にはね。だから株価が弱含みになっている。ただ所詮は「先食い需要」だから、その反動もきつい。政府や日銀それに民間のシンクタンクの試算では、増税前の駆け込み重要がGDPの約0.7%あるが、増税後の2014年度はその反動で0.7%下がるという。
C 1997年4月の消費増税時のケースで見ると、前年の一般会計の税収が53.9兆円なのに対し、増税の年は49.4兆円、その翌年も47.2兆円と以後16年に渡って増税前の税収を下回った。しかも増税による消費低迷が97年と98年の相次ぐ大手金融機関の破綻を招いた。
A 2011年1月に英国が消費税率を17.5%から20%に引き上げたときも、景気は失速している。この数字を今回の増税に当てはめると、14年度はマイナス成長になってしまう。
B すると、どちらにしても株価は下がると?
C そうは言ってない。財務省は消費増税を安倍政権で実現するために、大盤振る舞いを許してきた。僕は消費増税が確定するまでは景気を良くするためにも株価を強含みにする可能性が高いと言い続けてきた。その指標となるのは13年4〜6月期GDPの速報値。
B 8月12日に発表された第1次の速報値は2.6%の伸び率だったね。
C そう。予想を若干下回ったから、9月9日の第2次速報値はもう少し上げる必要がある。となると、ムード的にも株価が発表に向けて下がるのは好ましくない。
A 今年の高値1万6000円近くの買いは一般投資家や投資信託の買いだったけど、急落した際に突然入った買いは明らかに公的資金によるものだった。でなければ200円安の次の日に200円高といったことが繰り返されるはずがない。こんなバカな買い方をするのは公的資金だけ。
B 投資信託といえば、8月末の設定金額が多いみたいだね。
C 8月19日から8月28日までの設定が総額で1兆6350億円。そのうち日本株を組み入れた投信は5850億円ある。
B ある程度の下支え効果はあるわけだ。
A これは植草一秀の受け売りだけど、97年度の橋本政権は消費税率2%引き上げで5兆円の増税、社会保険料の負担の増加で2兆円、所得税増税で2兆円、さらに公共事業の削減4兆円と、合計13兆円の真水を経済から抜き取ったが、その結果、金融不安だけでなく株価も大暴落した。このように、財務省は消費税を上げることに成功した途端、手の平を返すように超緊縮財政に突き進んだ経緯がある。
(後略)