電機メーカーなど大手企業の「キャッシュ・コンバージョン・サイクル」(CCC)の採用が物議を醸している。CCCとは、仕入れから売上代金の回収までの期間を短縮して現金化を早め、支払いの長期化などで現金収支の改善を図るスキームだが、結局そのシワ寄せは立場の弱い2次、3次下請けなどの取引先に及ぶことになる。
今年7月、パナソニックが国内外の仕入先に対して「30日の支払サイト延長」を通告、コスト削減のために日本円の決済分については電子債権の利用を求めた。これによって同社は今期に100億円の資金を捻出できるという。また、ある大手メーカーは15日間のサイト延長を要請。不採算事業では45日もの延長を求めている。
実はリーマン・ショック直後にも、大手メーカーは手元キャッシュをできるだけ厚くしようとこぞって支払い延長に踏み切っている。昨年末には、存亡の危機に立たされたシャープが下請けに支払いサイトの延長を要請。いまや日本メーカーは軒並み解体的な規模縮小や事業転換を迫られ、生き残りのために背に腹は代えられないというわけだ。今回は下請法に抵触する資本金3億円以下の中小零細は除外、資金繰りに支障を来さない取引先を対象としているが、「条件に応じなければ、取引は中止という半ば強制的なケースもある」(中堅部品メーカー)ようで、これでは下請けイジメである。
さらに、「下請けの選別」という大手メーカーの思惑も見え隠れする。国内市場の縮小と新興国の台頭によって自動車業界では部品の海外調達が進み、電機業界でも中国や東南アジアへの工場移管で下請けの仕事が戻ってくる気配はない。こうした現象の根本は決して景気や為替動向ではなく、構造的な問題が背景にある。今回のCCCによって下請けの資金繰りはさらにタイトになり、淘汰が加速するのは火を見るより明らかだ。
(後略)