記事(一部抜粋):2013年7月号掲載

連 載

「子宮頸がんワクチン」

【新ニッポン論】田中康夫

 「医療の名の下に巨額利権が渦巻く新手の公共事業=子宮頸がんワクチン! グラクソ・スミスクラインのサーバリックス、メルクMSDのガーダシル。ダムを造れば洪水を防げるとの『幻説』と同じ。子宮頸がんワクチン接種後812人失神状態」。
 昨年6月28日、僕はツイッターで呟きました。よくぞ喝破したと賛同頂けるかと思いきや、いたいけな子供を子宮頸がんから守ろうとしないのか、と「激情反応」を頂戴し、困惑しました。
 が、1年後の6月14日、厚生労働省は子宮頸がんワクチン接種の推奨を一時的に控えよと全国の自治体に勧告。予防接種法を改正し、今年4月から毎年1000億円強の国家予算を投ずる定期接種となった直後の「朝令暮改」です。
 接種者10万人当たり61.6人の高確率で副作用が続出し、失神や意識消失、感覚障害、記憶障害等の重篤な副作用の発生率も同じく28.7人に達する「異常事態」を受けての推奨中止です。
 とは言え、厚労省が緊急作成したリーフレットは「現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で受けて下さい」と国民に判断を「丸投げ」状態。
 年少扶養控除の廃止で「財源」を捻出し、初潮も性交も未経験の児童・生徒に1人4.8万円の公費を投じて「リスク」を負わせる「有効性」は存在するのか? 「有形無形」の圧力に屈せず、僕が各種媒体で警鐘を鳴らし続けたのも、その「有効性」は「八卦見」以下だと直感したからです。
 「最終的に子宮頸がんを減らしたというエビデンスは御座いません」と厚労省健康局長は参議院厚生労働委員会で「告解」しています。「子宮頸がんワクチン」なる呼称が一人歩きする件のワクチンとは実は、子宮頸がんに至る可能性を齎すHPVウイルスに感染するのを予防するワクチンに過ぎません。
 では、HPVとは何ぞや? 子宮頸がんの原因として100種類以上も存在するのがHPV=ヒトパピローマウイルス=ヒト乳頭腫ウイルス。性感染症として大半の成人が発症経験を有する尖圭コンジローマもHPVが原因です。
 驚く勿れ、グラクソ・スミスクライン社のサーバリックスが「効用」を発揮するのはHPV16、18型の僅か2種に限定。米国メルクの日本法人MSD社(旧メルク万有製薬)のガーダシルとてHPV6、11、16、18型の4種に過ぎません。日本人に多く見られるHPV52、58型への「有効性」は両社共、効能書きに記していません。
 グラクソ・スミスクラインはHPで「20年、30年後の安心」を謳うものの、国立感染症研究所は既に3年前、「その予防効果は最長6.4年間持続することが確認されているものの、その予防効果の持続期間については確立していない」と報告書を作成しています。
(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】