新潟県阿賀野市の食肉卸・加工業者「S食肉」が、国産の牛肉に豪州産牛肉を混ぜたものを「国産牛」として販売していたことが本誌の取材でわかった。同社は転売先の食肉卸業者「ワイエスオー」から、「偽装牛肉をつかまされて損失を被った」と約2400万円の損害賠償請求訴訟を起こされ、昨年10月、一審東京地裁判決で約1400万円の支払いを命じられたが、控訴。結局、今年2月、1300万円を支払うことでこの業者と和解していた。
判決文などによると、S食肉は2009年10月、食肉卸の「MOTON」(後に倒産)に、「国産牛」の証明書のついた牛枝肉5580キロを販売した際、そのなかに故意に豪州産牛を混入した。MOTONは、その「偽装牛」を含んだ商品を食肉卸の「セイワ」に転売し、セイワは10年1月、それをさらにワイエスオーに転売した。
ワイエスオーはセイワから「国産牛」として買い受けた商品を同月中旬以降順次転売していったが、4月になってセイワの野崎誠二社長から「国産牛と表示してある商品のなかに豪州産牛が混入している疑いがある」との連絡を受け、さらに6月、野崎氏から「DNA検査で一部の検体から豪州産牛の可能性が高いという結果が出た」との連絡を受けたことから、以後の転売を中止した。
売るに売れない大量の在庫を抱えたワイエスオーは、直接の購入先であるセイワに代金の返還を求めたが、資金不足を理由に拒否されたため、偽装の張本人であるS食肉に賠償を求め、これも断られたことから同年9月、訴訟に踏み切った。
裁判でS食肉は、ワイエスオーが購入した国産牛(S食肉の証明書が付されている)は偽装牛ではないと主張したが、MOTONに販売した国産牛(同じくS食品の証明書付き)に輸入牛肉が混ざっていることは認めた。
ワイエスオーは、同社の代理人弁護士とS食肉の担当者の電話による会話記録を証拠として提出したが、その会話記録のなかでもS食肉の担当者は「偽装」の事実を次のようにあっさりと認めている。
《弁護士 脂の関係ですね。
S食肉 はい、脂の関係ですね。
これはもう、わたしどもに限らず、みんなそうらしいんですがね。
弁護士 はい。
S食肉 結局つぎ足す、つぎ足すで、やっぱり、この目方がですね、あの混入させないと商品にならないらしいんですよ。
弁護士 商品にならない?
S食肉 はい。
(中略)
S食肉 要するに商品をつくるためにはですね。その目方のなかに輸入品を混ぜざるを得ないらしいんです。国産だけじゃだめみたいな話だね。
弁護士 うーん。
S食肉 はい。そういうやっぱり、あの、商品つくるなかにはですね、どうしても混入せざるを得ない方法でやるらしいんです。
弁護士 それはあの、S食肉がやってるわけですか。
S食肉 ええ、そうです。わたしのほうは、みんなそれで商品化してるわけですよね。
弁護士 うーん。
S食肉 ですから本来わたしどもが(MOTONに=編集部注)売ったっていうことも、やっぱり問題あるかと思いますがね》
東京地裁は昨年10月の判決で、DNA検査では豪州産と国産の判別は困難で、ワイエスオーが購入したS食肉の「国産牛」に豪州産が混入していたという明確な証拠もないとしながら、MOTONに販売した「国産牛」に豪州産牛が混ざっていた事実はあったとして、S食品に上述したとおり賠償金の支払いを命じた。(後略)
(後略)