さる5月16日、『なめ猫』の仕掛け人として知られる津田覚氏(62)の会社が、約1億1000万円を脱税した容疑で当局国税局から東京地検に告発されていたことがメディアで1斉に報じられた。意外なところで意外なキャラクターの名前が出て、懐かしく感じた向きも少なくないだろう。
(中略)
今回告発されたのは津田氏が実質的に経営する「紫音」と「ファミリー共済会」。両社ともなめ猫とは直接関係のない会社で、手がけているのは葬祭業。それも警察、病院専門の葬儀業である。報道によると、2011年までの3年間で3億8000万円の所得を隠し、前述したとおり約1億1000万円を脱税。隠した所得は、高級マンションやブランド品の購入に充てた、とされている。
(中略)
問題の2社は前述のとおり警察と病院が主要な取引先だが、とりわけ繋がりが深いのは警察で、これはもっぱら紫音のほうで担当している。報道されたように、警視庁管内の40の警察署と取引があった(実際にはもっと多いという指摘もある)とされ、いわば警視庁御用達。
紫音は、各警察署から死体が出ると、それを速やかに運び出し遺族のもとへ送り届ける。このとき遺族の側に特に指定や希望がなければ、紫音が葬儀まで1貫して請け負う。死体を送り届けてくれた警視庁御用達業者に葬儀の1切を任せる遺族が大半で、死体の搬送と葬儀はほぼセットになっているといっていい。言葉は悪いが「おいしい商売」である。
紫音がこの特殊な葬祭業を始めたのは2003年から。津田氏にはそれまで葬儀ビジネスの経験はなく、いわばズブの素人がごく短期間で3億8000万円もの所得隠しができるほどの収益を上げたのである。ここに、マスコミでは報道されない「裏」がある。同社と津田氏を深く知る人物がこう明かす。
「津田氏がこの業界に飛び込むきっかけは、元警察庁キャリアのA氏の知己を得たことです。以来メキメキと力をつけ、警視庁では3本の指に入る『大手葬儀業者』にのし上がった。それもわずかに2、3年足らずの間にね。当然、業界内の妬みは凄まじい。今回の脱税も妬んだ業者のたれ込みが端緒でしょう。なにしろ警察で食っていこうと虎視眈々の葬儀業者はゴマンといる。警察相手ならまず取りっぱぐれはない。警察の仕事をしているとなれば信用力もつく。そのうえ強面になれる。変な筋からのイチャモンなど一切なくなるし、とにかくいいことだらけです。業者たちが参入の機会をうかがうなか、津田氏は、まるで鳶のように油揚をさらっていったんだ」
では、いかにして津田氏率いる紫音は、警察から出る死体を独占的に扱うことができるようになったのか。
「これだよ」
そう言って、津田氏と親しいこの人物は親指と人差し指で○をつくり、それをぶらぶらと揺らしてみせる。
——カネ?
「そう、ウラのね」
——つまり賄賂?
「もちろん。ただし、足はつかない。どうしてか。現ナマを渡したりすると、出すほうにも貰うほうにも罪悪感が生まれる。だから、こういう場合は現金ではなくビール券というのが警察の常識だそうです。津田氏がそう言っていた」
(後略)