(前略)
C アベノミクスの第2弾の中でも首を傾げたくなるのが「クールジャパン戦略」。日本の文化をアピールするための海外放送枠を確保する目的で、政府は500億円拠出して官民ファンドを設立するんだ。併せてビザ発給要件も緩和すると発表したんだ。
A 第2弾では「攻めの農林水産業」の名目で、6次産業を推進するために官民ファンドを活用することが発表されたね。第2の矢の財政政策のキモが「官民ファンド」では、官僚の天下り先が増えたにすぎない。ただでさえ日本は官僚がGDPの7割以上を差配している国。おそらくダブルカウントを加えると8割を超す。さらにその比率を高めてどうするのだろうか。呆れてしまう。
B 官制経済が民間経済を圧迫していると言いたいの?
A そう。規制緩和と言いつつ、民間にムチとアメをしゃぶらせている。第1の矢の「金融緩和」を見てもわかるように、当局の政策でマーケットの動きさえコントロールできることが明白になった。
B 金融緩和以外にマーケットに影響を与える政策は何かあるの?
C マーケットに一番インパクトを与えたのが、今年1月からの「金融商品取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令」だね。
B 仰々しい条例の名称はいいから、内容をかみ砕いてよ。
C 今年の大発会(1月4日)から「同一資金で何度でも信用取引の売買が可能」となったんだ。
B 今までは、信用決済しても、その決済分の枠は翌日からしか利用できなかったものを、決済分が同日何度でも利用できるようになったということだね。デイ・トレイダーにはたまらない緩和策だ。
A 4月30日に期日となった「空売り規制と自己株式取得に係る時限措置の延長」も企業には都合のいい緩和となったよ。
B 空売り規制については、さらに6カ月の延長が決まったよね?
A ただ10月31日で打ち切られる。注目すべきは上場企業の自己株式取得規制が緩和されたこと。
B 今までは、直近4週間の1日当たり平均売買高の25%しか自己株買いができなかったはず。
A それが100%に緩和され、取引終了時刻直前30分の買い付けもOKとなった。
C 証券取引等監視委員会(日本版SEC)も、仕手筋対策として複数日にわたる終値を監視している。そうしないと相場操縦されやすくなるからね。
A 発行体(企業)は自社の株価を吊り上げやすくなったってことか。おそらく、これで年後半からは大型時価発行増資が増えてくるはず。投資家に規制を求めるなら企業にも規制を求めるべき。
C 1990年のバブル直前、企業は公募増資で市場から60兆円吸い上げた。2000年のITバブルのIT関連企業も同様。そのせいで下げは上昇よりはるかに酷かった。
B バブルを作りあげるのは結構だけど、企業の食い逃げ増資の野放しはまずい。数年前のメガバンクの相次ぐ巨額増資に、東京電力の福島原発事故前の大型増資。そのほとんどの引き受けに野村証券が絡んだ。それだけでなく、野村はなりふり構わず、立て続けに時価発行増資も強行したよ。
A 今の安倍内閣と同じで、金融政策で大盤振る舞いしている間はいいけど、その資金を増税(増資)で回収しようとすると、景気が大失速する。消費税導入後、3%から5%に引き上げた後、景気がどうなったかを学習すべき。
(後略)