記事(一部抜粋):2013年5月号掲載

社会・文化

ブックメーカー投資詐欺、ついに国税が一斉捜索

【ズームイン】

 英国の公認スポーツ賭博「ブックメーカー」を利用した投資を謳い、マルチビジネスのネットワークを使っておよそ400億円を集めた投資会社スピーシー。本誌は昨年7月号で第1報を入れて以降、同社の動向を再三お伝えしてきたが、ついにさる3月27日、同社の関係先に国税局査察部(マルサ)の家宅捜索が一斉に入った。大型詐欺事件への展開も噂され、いつ事件化してもおかしくないといわれてきたが、その皮切りを国税局が担うことになった。
 同日家宅捜索に踏み切ったのは、金沢、東京、熊本の3つの国税局。そのうち最も大掛かりだったのが金沢国税局だ。Tというネットワーク中枢に位置する人物の小松市の自宅とオフィスに、のべ25人の職員を投入、都合15時間を超える洗い出しをおこない、差し押さえた資料は、段ボール箱数十個に及んだ。
 Tは直前までフィリピンに旅行中で、家宅捜索当日に、マニラから福岡空港を経由して小松に帰るというスケジュールだった(マニラから小松への直行便はない)。午後3時にTが福岡空港に到着すると、出迎えていたのは金沢国税局の査察官2人。その後、Tは2人の査察官に挟まれながら小松空港に降り立った。トランジットの空港にまで査察官が出向き、飛行機に同乗して現場に戻る——。金沢国税局の並々ならぬ気合いが感じられる。
 スピーシーにおけるTのポジションは、同社の実質的首謀者である波田直樹氏のすぐ下、つまりナンバー2。集めた資金の流れについて詳しい事情を知っているとみられている。
 T自身のスピーシーに絡むカネの出入りは20億円は下らないと国税当局は見ているようで、家宅捜索の日以降、ほぼ1週間に1度の割合でTを呼び、事情を聞いている。もちろん「告発」ありきの動きである。
 Tが捜索を受けた同じ3月27日、東京国税局は、午前8時過ぎに神奈川県在住のSの自宅に乗り込んでいる。査察部の担当官は8名。その際、担当官はSに対し次のように捜索の理由を述べたという。
 「金沢国税局が手がけているT氏の所得税法違反、並びにT氏が代表を務める合同会社の法人税法違反の件で家宅捜索します」
(後略)

 

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