記事(一部抜粋):2013年5月号掲載

経 済

西武HDとサーべラスの攻防、ホワイトナイトはどこか?

【証券マン・オフレコ座談会】

B 再び西武ホールディングス(西武HD)に関する報道がかまびすしくなってきたね。
C 西武HDと筆頭株主のサーベラスとの間で、経営方針をめぐる駆け引きがヒートアップしている。
B サーベラスは多摩川線など不採算路線の廃線と、埼玉西武ライオンズの売却を要求したと言われている。サーベラス側は否定したようだけど。 
C 西武HD社長の後藤高志がサーべラスの要求をリークしたことで、危機感を持った沿線住民が署名運動を開始した。最終的に10万人を超す署名が提出されたものだから、サーベラス側も否定せざるを得なくなったんじゃないかな。
A 結局、再上場の価格の引き上げを狙った要求だったってこと。そもそもハゲタカファンドなんだから大株主になった段階で、今回のような要求は覚悟しなきゃ。
B でも後藤は要求を突っ撥ねた。
A 後藤は「再上場にあたり、東証や関係機関からご指導をいただいているところであり、諸規則・ルールに則り公正・適正に手続きを進めなければならない。従って特定の株主に特別な権利を付与するような契約や条件提示はお断りするのが原則」と述べているよ。
B 廃線や球団売却はその原則に抵触するかもしれないけど、上場前にみずほ証券が実施した西武HDの評価額がここ半年で大きく下落した。経営陣は責任を取るか、もしくはサーベラスが提案する役員を受け入れるべきじゃないの?
C サーベラスが役員に提案したのは、クエール元米副大統領、スノー元米財務官、フォスターあおぞら銀行取締役、ブラウンプリンスホテル取締役、五味広文元金融庁長官、江尻隆弁護士、白川裕司あおぞら銀行取締役、それに宇野紘一公認会計士の8人。
B サーベラスの関係者ではない、五味や江尻を提案するメリットはどこにあるの?
A この2人の経歴を調べると面白いことがわかる。それが今回の騒動を紐解く「鍵」になるんだ。
B 五味は長官当時、「行政処分を乱発する暴君」とか「UFJ銀行を葬った男」と言われた人物だよね。
A UFJに過去に例がないほど長期の特別検査をやったものだから株価が下がり、結果として自主再建が困難になった経緯がある。
C 最終的にUFJは三菱東京に吸収合併されたんだよね。
A そう。まさにそこがポイント。
B 江尻は旧あさひ法律事務所の創立メンバーでM&Aで活躍したことで知られている。たしかあおぞら銀行の元監査役だったかな。
A この経歴のファイルを見て。
B マイカルの民事再生手続きにおける申し立て代理人……。
C マイカルは結局、大手スーパーのイオンの傘下となった。イオンの筆頭株主は三菱商事だよ。
A 江尻が現在、役員をやっている会社を見て。
B 三菱UFJ証券ホルディングス(三菱UFJHD)と三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱MS)監査役。すると三菱絡み?
A 三菱UFJHDの前身は野村系の国際証券と東京三菱証券で、国際証券のスキャンダルに乗じて三菱が不得手だった証券部門を拡充するために傘下に収めたもの。合併後の三菱証券の役員に三菱商事元会長の槙原稔と並び、トヨタの渡辺捷昭がいた。
(後略)

 

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