記事(一部抜粋):2013年4月号掲載

社会・文化

佐世保の弾薬庫移転でなぜか大阪府が「暗躍」

【ズームイン】

 名護市辺野古の埋め立て承認申請書を政府が提出し、「不意打ちだ」と反発の声があがるなど、すったもんだの普天間基地移設問題。しかし、「埋め立て」をめぐってすったもんだしているのは何も沖縄だけではない。長崎県佐世保市でも同じような問題が起きている。もっとも、こちらは世間の関心をひくことなく、なぜか大阪府が水面下で「工作」に走り回っているというのだ。
 西日本で最大級の米海軍基地がある佐世保では、現在、佐世保弾薬補給所、通称・前畑弾薬庫の移設計画が進行している。
 前畑地区は近年新興住宅地域として開発が進んだが、その住宅地の真ん中に、弾薬庫34棟を抱える補給所が鎮座している。日米政府が同弾薬庫の移転で正式合意したのが2011年11月。合意案の内容は、前畑から東に向かって一山越え、さらに佐世保湾を横切った直線距離で3キロほどの場所にあるもう一つの米軍弾薬庫、通称・針尾島弾薬庫に前畑の弾薬全部を移したうえで、跡地を返還するというものである。
 移転を実現するには、まず移転先の針尾地区に、弾薬輸送船の係留施設や新しい弾薬保管区域を建設することが条件となるが、「移転は佐世保市の宿願なので、必ず実行に移されます。総事業費は1000億円。我々にとってもまたとないビジネスチャンス」と勢い込んでいうのは地元のさる関係者。
 「前畑にある大量の弾薬を移すためには、針尾島弾薬庫を拡大しなければならなりません。拡大するといっても、土地を買収していたのでは、気が遠くなるほどの時間と予算が必要。どうするかというと、辺野古と同じ。針尾島弾薬庫に沿った海の部分、安久ノ浦の一部を埋め立てる計画なのです」
 では、埋め立てに使う骨材はどこから調達するのか。別の関係者が語る。
 「安久ノ浦が佐世保湾と接している線からほんの100メートルほど先の沖に、高島という小さな無人島があります。かつては金鉱があるといわれた島で、実際に金が掘られたこともあったそうです。実は、この島から山砂を取り出す計画なのです。島は全島がほぼ安山岩。安山岩は埋め立ての骨材に適しているといわれている。しかも安久ノ浦とはほんの目と鼻の先だから、運搬費用だってかからない。我々はこの石を『捨て石』と呼んでいます」
 この高島という無人島、今後大いなる利益を生む可能性大なのだが、そうなると気になるのは、この小島の所有者である。
 「大阪府です。元は大阪の不動産会社が全島所有していましたが、地方税を滞納したため大阪府に差押をかけられたのです」(同)
 確かに同島の登記簿謄本を見ると、昨年9月27日付で大阪府が差し押さえている。(後略)

 

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