記事(一部抜粋):2013年4月号掲載

経 済

TPP参加も消費税増税もすべて米国のシナリオ

【証券マンオフレコ座談会】

(前略)
A 今回のTPP交渉で気になるのは、2月22日のオバマとの日米首脳会談の直後、「米戦略国際問題研究所(CSIS)」で安倍が講演をおこなったことだ。
B CSISというと小泉進次郎が1年半ほど研究員として修業した、タカ派のシンクタンクだよね。そこで安倍は何を話したの?
A 「アベノミクス」に関する説明と、尖閣諸島問題が中心だったみたい。ただ、こんな話はどうでもよく、肝心なのは出席者の顔触れ。それについてはどこも取り上げていなかった。
B 誰が出席していたの?
A 元米国務副長官のリチャード・アーミテージやCSIS所長のジョン・ハレムなどに混ざって、なぜか最前列に、アラスカ州知事のショーン・パーネルがいた。
C となると天然ガスなどエネルギーに絡んだ密約があるかも知れない。州知事は元々エネルギー企業とは関係の深い人物だからね。
A 昨年、日本経済新聞社とCSISが共催したシンポジウムで、CSISの理事で、ハーバード大学教授のジョセフ・ナイは、「TPPに日本が入れば通商面で東南アジアをリードできる。米国とカナダから天然ガスの供給を保証してもらえる」と発言しているんだ。
B TPPに日本が加われば、見返りに天然ガスの供給を保証するということ?
A そういうこと。アメとムチ。もちろんTPPがムチ。
C アラスカ州の今一番の問題は、ノーススロープから天然ガスを国際市場に輸送するためのパイプラインとプラントに、コストが450〜650億ドル掛かることだよ。
B 国際市場じゃなくて、米本土に送ればいいんじゃないの?
C 最初はそうだったけど、米国でシェールガス革命が起きたことで、天然ガスの価格は急落し、この話はとん挫した。そこで出てきたのが液化天然ガス(LNG)にして日本に売ろうという話。LNGなら原油価格にスライドするので高く売りつけられるからね。
B 原発が停止して火力に頼らざるをえない日本にとっては、やっぱりアメなんじゃないの?
C 今まであった原油を送るパイプラインでは、天然ガスは送れない。天然ガス用のパイプラインとプラントの敷設には巨費がかかる。「財政の崖」を抱える米国に、インフラ資金が出せるはずないよ。
B なんらかの形で日本が資金を出すことになるの?
C Aさんの話を聞いて、そう確信したよ。だから天然ガスの供給はアメになどなりっこない。
A そんな状況下でアルジェリアのガス処理プラント施設でテロが起こったわけだ。随分とタイミングがいい。不謹慎かも知れないけど、マーケットから見ると個別銘柄はプラスになるかもしれない。
B プラントメーカーに特需?
C 日揮はアルジェリア事件の後だけに、ちょっとキツイ。本命は三菱商事が筆頭株主の千代田化工建設。「安倍銘柄」と言ってもいい。
A プラントメーカーはそうかも知れないけど、アラスカ南部の沿岸地域にLNGの輸出ターミナルを建設し、日本も受け入れ基地を増設するとなると、トーヨーカネツや石井鐵工所など世界的タンクメーカーに特需が期待できる。特に石井鐵工所は保有不動産も結構あるから、含み資産株ブームに乗りやすい。
B そう言えば、年初から土地持ち会社の株価上昇がすさまじいね。
C 先月号で土地持ち会社として話題に出た東京會舘は、その後あっという間に5割高になったよ。
A 同じく「有力な再開発地域に広大な土地を保有する機械株があり、その土地の含みだけで株価の4倍の含み資産がある」とは東京機械製作所のことで、その後株価は約3倍になった。この流れはしばらく続くんじゃないかな。(後略)

 

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