連 載
【狙われるシルバー世代】山岡俊介
「少額短期保険」に御用心!「詐欺」で告訴された業者も
「少額短期保険」なるものをご存じだろうか。
保険金額が少額(病気死亡保険金は300万円以下、損保は1000万円以下)で、保険期間が2年内(生保、医療保険は1年。損保は2年)の保険のことだ。それを扱う少額短期保険業者は現在68社。
保障内容はさまざまで、糖尿病患者専用の保険、介護保険を補完する保険、他の保険に過去・現在の病歴・病状から入れない者を対象にした保険、五〇歳以上を対象にした保険、さらには自分が死んだ時の葬儀代を出してくれる保険、高齢者が孤独死し部屋を汚すなどのリスクをサポートする賃貸住宅オーナー向け保険など、高齢者ないし高齢者問題に対応した商品も多い。
既存の生保や損保会社にとっては市場が小さすぎる、あるいはリスクが大きいので扱いづらい、といった保険が、小規模ゆえの機動力やパイオニア精神で開発・販売されている。
この少額短期保険、まだ誕生して7年ほどだが、すでに契約件数は総計500万件近くになり、年々契約者数も保険料収入(約500億円)も増えている。
こうしたなか、金融庁はさらなる高齢化社会に対応すべく、生保、損保、そして少額短期保険についても規制を緩和し、例えば保険金を支払う代わりに、介護サービスや有料老人ホームの入居権を提供する商品を認可する(現在、契約者に保険金以外の物品・サービスなどを給付することは認められていない)ことなどを検討している。
これだけ聞けば、何とも結構な話のようだが、実は少額短期保険業者には、経営が杜撰なところが少なくない。なかには実質経営破綻しているとみられるケースもある。規制を緩和すれば、前述した商品内容からも察せられるように、高齢者を中心に被害が拡大する可能性が指摘されているのだ。
(中略)
実は現在、民事と刑事の両方で訴えられている少額短期保険業者がいる。その人物をB氏、B氏が実質経営する保険会社をC社としよう。告訴容疑は、告訴人・A氏に甘言を弄し5000万円以上のカネに騙取したという「詐欺罪」である。
(中略)
C社は09年始めから営業を開始しているが、10年の時点で、関東財務局から、顧客の解約などに備え最低3000万円のキャッシュフローを確保するようにとの指導を受けていた。C社のキャッシュフローはそのギリギリの水準にあった(12年3月末の賃借対照表では3409万円)。契約数を増やせば、解約や保険の支払いリスクが高くなるため、C社では「新規の契約は月に100件も取れればいい」「保険金はあれこれ理由をつけてなるべく支払わないようにしろ」といった指導がおこなわれていたという。(後略)