「環境省のエース」と呼ばれているキャリア官僚がいる。仮にA氏としておこう。肩書きを見ると一見地味だが、省内の誰もが認める実力者だという。
京都大学を出て環境庁(当時)に入庁して以来、一貫して自然環境保護畑を歩み、阿蘇、日光、大雪山といった国立公園の管理事務所を渡り歩いた後は、本省に戻って自然環境保護のエキスパートとして活躍している。なんと数代先の事務次官候補と目されているらしい。
「Aさんは、地味な環境省の中でもとりわけ地味な分野の専門家なので、次官などには縁がなさそうですが、なかなかどうして人を統率する力量もある。一見気難しそうな感じのする人ですが、話してみると気さくなところもある。自然保護のことを語らせると、それこそ何時間でも話し続ける。それにストップをかけるのが大変なのが、欠点といえば欠点ですかね」(同僚の一人)
能力があるうえに、人間的にもなかなか好人物のようである。
ところがここにきて、そのA氏の足を引っぱりかねない問題が持ち上がっている。元凶になっているのがA氏の実兄(B氏とする)だという。
「B氏は詐欺師ですよ」
そう憤るのはB氏を知るさる実業家だ。
「天ぷら話を持ち歩いては小銭を掠め取る、という行為を繰り返しています。詐欺話のネタは不動産。キーワードは国立公園です。いうまでもなく、国立公園内では土地を取得するのはもちろん、小さな小屋一つつくるのだって簡単にいきません。しかしB氏は『自分にはできる』といって話をもちかけるのです。『実は…』といいながら弟の名前を出し、『弟はいま国立公園の管理を一手にまかされている』という話に持っていく。彼らが兄弟だという話に嘘はなくても、国立公園内の不動産をどうこうできるというのは嘘八百です。それでも環境省のキャリア官僚である弟さんの名前を出されれば、中には信じてしまう人もいる。『国立公園内の不動産の取得や開発の権利を取得できるよう弟にかけあうからカネを寄越せ』と言われたら、山っ気のある人はつい出してしまうのです。実は私もその一人で、都合500万円はやられています」
(後略)