記事(一部抜粋):2013年1月掲載

経 済

FX業者と金融庁が大バトル

「バイナリーオプション」の規制めぐり

(前略)2012年12月5日、FXの業界団体「金融先物取引業協会」は各業者を集め、「FXバイナリーオプションの規制案」を提示した。いわゆる業界の自主規制で、「賭博性が高く、射幸心を煽る」といわれるバイナリーオプションに一定の網をかけようというものだ。
 会合には金融庁の証券課課長補佐も招かれて挨拶。これは規制の内容が事前に監督官庁に説明され、承認を得ていたことを示している。
ところが、規制案が提示されると、突然、こんな発言が飛び出した。
 「とんでもない。やっていけないよ、それでは」
 声の主はGMOクリック証券の幹部。出席者の一人がいう。
 「その瞬間、場が凍りつきました。まさか監督官庁の幹部の目の前で、あんなことを言うなんて」
 規制案を後押しする金融庁と、規制案を飲んだら死活問題になるという業界最大手が、衆人環視のなかでにらみ合ったのだ。会合はその後、大荒れとなり、結局、規制案の合意を見ないまま終了した。
 そもそも、規制の対象として俎上にあがったバイナリーオプションとはどういう取引か。業界関係者が解説する。
 「『二択型商品』と呼ばれていて、決められた時間の為替相場が、現在より高いか安いかを当てるものです。例えば、1時間後または10分後の相場が、今より円高か円安か、これを当てる。要は『丁半博打』と一緒です」
 経済分析や相場を読む力は必要ない。勝つか負けるかの単純なギャンブル。掛け金は、たとえばある業者では100円からできるうえ、1日に100回以上取引することも可能。方法が簡単で、賭けの結果がすぐにわかることで人気になったが、のめりこんで損失を膨らませる人が増えたことから、規制強化の議論が出てきたわけだ。
 このバイナリーオプション、いまやFX業者にとって最大の収益源になっていると、あるFX業者が明かす。
 「2年前、既存のFX取引にレバレッジ(倍率)規制が設けられて以来、FX業者は顧客を取り込むために熾烈な競争を展開してきました。いまや手数料無料は当たり前。スプレッド(通貨間の売値・買値の差額)も競争で引き下げられて1銭以下。バイナリーオプションだけが儲けの種なのです。たとえばGMOクリックがバイナリーオプションであげた営業利益は、10月の1カ月でも7億5000万円。年間で90億円と推定されている。一方、同社の年間営業利益は約40億円。バイナリーオプションがなければ赤字でしょう」(後略)

 

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