(前略)2013年は年明け早々からシャープが最大の正念場を迎える。2年間で1兆5000億円もの巨額赤字を計上したパナソニックも、どの商品で戦っていくのか、いまだに戦略が見えてこない。
「電力供給に不安のある経済は発展しない」といわれるが、製造業の凋落に追い打ちをかけるのが製造原価の根幹である電力料金の値上げ。パナソニックで約50億円、シャープは20億円規模のコスト増となり、九州に生産拠点をシフトさせている自動車産業にも九州電力の値上げは大きなダメージを及ぼす。
鉄鋼産業では1000億円規模の追加負担が重くのしかかる。なかでも「鉄スクラップを原料に電気炉で鉄鋼を生産する電炉メーカーは存亡の危機に立たされる」(業界関係者)という。そこで注目を集めているのが国内4位の電炉メーカー、中山製鋼所。借入金は約1000億円で3期連続の赤字。12年春から水面下で再建をめぐる混乱が続いたが、ようやく年末に「私的整理」案が打ち出された。骨子はメーンの三菱東京UFJなどに約600億円の債権放棄を要請、企業再生支援機構に債権の買い取りを求め、新日鉄住金にも増資を要請するというものだが、先行きは厳しい。債権放棄で身軽になったとしても売上規模を維持するのが困難なうえに、「関西電力の電気料金値上げが致命傷になりかねない」(大手電炉幹部)ためで、40行もの銀行団が抜本支援に踏み切るかは流動的だ。筆頭株主の新日鉄住金も共栄製鋼、合同製鐵など系列電炉を4社も抱えていることからも、中山製鋼所の法的整理の可能性は否定できない。
金融界も2013年は激動の年になりそうだ。中小企業金融円滑化法の終了に伴う地元経済の地盤沈下とともに融資先の激減に見舞われる信金、信組など中小金融機関では大がかりな再編が避けられない。金融庁が証券会社や保険会社への公的資金注入制度案を一月の通常国会で提出する背景には、国債リスクとともに「今後の野村證券や大和証券のメガバンクとの合従連衡などの動きを想定したもの」(金融関係者)との見方もある。(後略)