(前略) 一般には、小泉構造改革に対する批判が原因で自民党は政権を失ったといわれている。しかし仔細に分析すると、自民党の支持率が落ち始めたのは、小泉政権を否定して改革マインドが失われてからだ。とくに安倍政権時代の2006年12月、郵政民営化に反対した議員を復党させてから風向きが変わった印象がある。
こうした矛盾した動きがあると、悪循環に陥り、次々と悪いことがおこる。閣僚の事務所費問題、政府税調会長の個人的スキャンダルなどが発覚したことで、政権のパワーはますます落ちていった。年金問題への対応も適切でなかった。
こうした一つひとつの事件を見れば、改革マインドとは無関係のようだが、そうではない。政権には、従来の体制を使って堅実に当面の課題をこなす「体制維持派」と、従来の体制を打ち破る「改革派」の二つの顔がある。改革マインドがなくなると、既得権擁護の傾向が強まり、政権の歪み(つまり、一つひとつの事件)が表面化しやすくなるのだ。小泉政権は、改革派の竹中平蔵経済財政相ラインと体制維持システムである霞が関ラインを、案件ごとにうまく使い分けていた。
新政権が最初に受ける審判2013年七月の参院選である。6年前の参院選では、当時の安倍自民党はわずか37議席しか取れずに惨敗した。そのリベンジを果たすことが、現安倍政権にとって最重要の課題である。
そのために安倍氏は、国会以外の場所で経済政策を練る戦略を考えているようだ。官邸人事や閣僚人事が重要なのはもちろんだが、小泉政権時代の財政諮問会議のような会議を復活させ、マクロ経済政策の司令塔にするとみられている。
そこで改革マインドを明らかにし、どれだけ実効のある策を打ち出せるかが政権の命運を左右する。補正予算もあるから、官僚制の頂点にいる財務省との距離感も重要だ。つまり、体制維持システムをいかに使いこなすかということだ。
日経平均株価は、野田氏が解散を決めた11月14日の8664円から、選挙直前(12月14日)の9737円まで、自民党政権誕生の予想から12%あまり上昇、自民党大勝を受けて12月19日には1万円の大台を回復した。これは、新政権の景気対策に国民が大きな期待を寄せていることを示している。しかし期待感が大きいだけに、それが裏切られると逆バネになり、参院選ではノーを突きつけられるだろう。(後略)