記事(一部抜粋):2012年12月掲載

政 治

仕事のできない子会社社長、白川・日銀総裁の「言い訳」

【霞が関コンフィデンシャル】

(前略)
 安倍氏は、デフレから脱却するために、日銀法を改正してでも、無制限の金融緩和、インフレ目標の設定、建設国債の買い入れなどをおこなうべきだと主張している。不思議なのは、安倍氏のこうした発言を、日銀に金融緩和を要求していたはずの民主党の政治家たち(前原誠司経済財政担当相など)が批判していることだ。
 野田首相も首相公邸で英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』のインタビューに応じた際、「日銀の独立性はどうなるのか。主要国は中央銀行の独立性を担保してきた。それを壊す議論は国際社会で通用するのか」と批判している。民主党がこれまで日銀に要求してきたことは中央銀行の独立性に反しないが、安倍氏の「インフレ目標」はそれに反するというのだ。
 これには、FTの記者もびっくりしただろう。というのも、英国は1992年からインフレ目標を導入しており、それが英国経済の成長に大きく貢献したことが知られているからだ。イングランド銀行のキング総裁は「政府が中央銀行にインフレ目標の数字を示すのは当たり前だ」と言っている。
 民主党の安倍氏への批判は、白川方明・日銀総裁の主張とほぼ同じである。整理すると、㈰日銀法改正、インフレ目標の設定は、中央銀行の独立性を損なう、㈪無制限の緩和はハイパーインフレを招きかねない、㈫建設国債の日銀引き受けは、財政規律に反する——というところだ。
 しかし、㈰についていうと、現政権は独立性の意味をわかっていないか、わざとはぐらかしている。
 「独立性」には、目標の設定も含めたオールマイティな「目標の独立性」と、与えられた目標の下で達成手段の選択が自由にできるという「手段の独立性」がある。先進国で独立性といえば、後者の手段の独立性を意味しており。それは2010年5月、バーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長が日銀本店で講演した「中央銀行の独立性、透明性と説明責任」でも明言されていたことだ。
 そもそも中央銀行は政府のいわば子会社なので、政府が目標を設定するのは当たり前である。
 ㈪について安倍氏が言っているのは、「インフレ目標を達成するまでの間は無制限に緩和する」という意味であって、インフレ目標を達成した後も緩和を続けるわけではない。実際、インフレ目標を設定している先進国では、ハイパーインフレになっていない。
 ㈫は、安倍氏は「市中買い入れ」の意味で発言しているので、そのためにする議論だ。ただし、仮に日銀引き受けであっても、財政法の観点からいえば「程度問題」である。今年度の国債発行は174兆円だが、そのうち建設国債は5兆円にすぎない。
 そもそも、日銀引き受けが禁じ手であるという主張が誤りで、今年度も借換債17兆円の日銀引き受けがおこなわれている。借換債も、建設国債を含む新発債も、条件は同じで、市場では混在して取引されており、両者に区別はない。区別しているのはあくまで財務省サイドの都合だ。
 財政規律の観点からいうと、今年度は日銀引き受けは30兆円の枠がある。仮に建設国債5兆円を全額日銀が引き受けたとしても、借換債17兆円と合わせ22兆円なので、何の問題もない。これは法改正なしでもできる話だ。
 白川総裁は、約3000万円の年収を得ているが、はっきり言ってそれに見合った働きをしていない。過去12年間のインフレ率が、目標とされる範囲にどれだけの確率で入っているかをみると、FRBが75%で、日銀はわずか17%である。欧州諸国も70〜80%が当たり前。これだけ外しているのは日銀だけだ。白川氏はサラリーマンによくいる「目標を与えられても達成できずに、言い訳ばかりする人」にすぎない。
 言い訳男の白川総裁は、言いたい放題だ。先日、都内の講演でこう話していた。
 「日本では、物価は上がらないのが普通だという感覚が定着していて、インフレ目標を設定しても、人々のインフレ予想が高まることは起こり得ない」「経済成長には、思い切った規制緩和など政府の役割も大きい」
 同業他社と比べ実績が全く上がっていない子会社の社長にもかかわらず、その言い訳は天下一品だ。業を煮やした親会社が、子会社の業績をあげようと業務命令を出そうすると、「独立性が」と言い張る。白川総裁の言動は、つまりそういうことだ。(後略)

 

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