記事(一部抜粋):2012年11月掲載

連 載

【平成考現学】小後 遊二

維新の会の失速

 自民党がダメだから民主党にしたが、もっと酷いことになったので、橋下徹大阪市長の大阪維新の会に引っかき回してもらうしかない、と国民の多くが考えていた。ところが、自民党総裁選のドラマチックな盛り上がりと維新の会のもたつきで、次の衆院選は自民党で行こうという流れが一気に出てきた。
 維新の会の失速理由と体勢挽回策について考えたい。まず維新の会は地方政党である。大阪をよくするために真の地方自治を要求する、中央集権打破のために統治機構を変えて道州制とする、消費税の地方税化を要求する、手始めに大阪都構想を実現する——という動きには勢いがあり、理にもかなっていた。また大阪で実行されつつある歳費の削減や教育などの改革という「実績」もある。今までの多くの首長は中央に楯を突き問題を指摘するだけで、変化や結果を残した人は少ない。とくにテレビなどに登場し名前の知られている人で測定できる成果を残した人は皆無、と言っていい。
 しかし問題は、地方政党だった組織をそのまま全国政党にしたことである。「維新八策」なる綱領集を踏み絵に議員や維新塾生を選別したが、表に出ている人材でこれは、という人はいない。その証拠に党首は橋下氏で幹事長は松井一郎大阪府知事である。両者とも衆院選には出ないで、大阪から全国政党をコントロールするという。
 大阪維新の会は日本の統治機構を変えるのだ、ということで勢いがあった。その勢いを関西広域連合に拡300選挙区全てに「落下傘」となると、復調著しい「地元密着」の自民党候補や劣勢を意識して必死に食らいつく民主党候補に対抗するのは至難の業だ。
 みんなの党との合併問題も暗礁に乗り上げた。「党」を解体して個人々々で日本維新に入ってこい、というので渡辺善美党首が二の足を踏んでしまった。
 国会議員も地方議員も特別顧問も維新塾生もすべて「同格」としたが、橋下氏だけは拒否権を持つ「絶対君主」、とする運営規約を定めた。今後は300の選挙区をめぐる配置で血を見るだろうし、比例区の順位でも大多数の人の不満と反感を買うだろう。維新の会は全国政党へ脱皮する手順を踏まず、自民党代表選で水かさを増した無党派層の激流の中へ完全に押し流されてしまったのである。
 どうすればいいか? 原点に戻るしかない。強力な地方政党に戻り、まず大阪、そして関西広域を代表する政党になることだ。中央集権がこの国をおかしくしたのは間違いないので、大阪をピカピカに磨きつつ中央の権限を次々に奪っていく。全国の同志を見つけ、新潟州、中京都、九州府などを標榜する「地方政党」と一緒に国会に議員を送り込み、中央官僚の握りしめた権限を次々と解放していく。
 安倍自民党とも憲法改正では連立を組み「統治機構」の変更を実現する。絶対君主を持つ「日本維新の会」ではなく、いろいろな地方政党や第3極の政党が連携する「(それぞれ)みんなの維新」を全国で展開する。(後略)

 

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