(前略)
この創立130年を記念して、産学連携で取り組む構想があるという。「……あるという」と不確かな表現にしたのは、この構想、あくまでその企画の中心に立つと主張する側の言い分であって、しかもその中身が、「超小型原子炉の製造、実用化(販売)」という驚くべきものだからだ。
この構想の実現に目下、必死で取り組んでいるのは、NCI(東京・港区赤坂)なる会社で、研究所を東工大の原子炉工学研究所に置いている。
同社の名誉会長を務めるのは、服部禎男氏。東工大出身の工学者で、アカデミズムの世界では原子力研究の一方の権威と見なされているという。
その服部氏が福島第1原子力発電所の事故以来、力を注いでいるのが、超小型原子炉なのである。
どのくらい超小型の原子炉かというと、ドラム缶の4分の1くらいのスケールだという。それを服部氏が考案、すでに実験段階を通り越し、サンプルも完成しているという(ただし実物は米国にあるとか)。
「なにしろ超小型ですから、どこにでも設置することができる。それでいて、これまでの巨大な原子炉と同じくらいの効率で電力を生み出す。大変な発明です。既成概念に縛られていては絶対につくり出せない偉大な発明です。安全面でも非の打ちどこがない。これを地中に埋設して使用するのです。福島第1原発のような事故は起こりようがない」
こう語るのは、当のNCI社関係者である。
同社は、服部氏の考案した超小型原子炉を販売する商社という位置づけである。このNCIが「東京工業大学130周年記念の産学連携事業の中心にいる」というわけだ。
ところで産学連携の実態はといえば、要は寄付集め(資金集め)である。
「資金が集まらなければ、この産学連携の一大企画は直ちに頓挫してしまう」(同)と本人たちは至って真剣である。(後略)