本誌7月号「まるで第2の『AIJ』カリスマ投資家は風前の灯」で取り上げた「カリスマ投資家」が、またぞろ怪しいカネ集めに動き出した。
この投資家、7月号の記事では実名ではなくイニシャル表記にとどめたが、オーロマーレという投資会社の実質代表者、波田(かわだ)直樹氏のことを指している。
その波田氏、本誌記事が出た後は、「被害者」だけでなくマスコミからも追いかけられるようになり、最近もテレビの報道番組の突撃取材を受けていた。番組では「K氏」と匿名扱いで、顔にもモザイクがかかっていたが、紛れもなく波田氏その人である。
番組を見たさるネットワーカー(ネットワークビジネス=マルチまがい商法に参加する人をそう呼ぶ)が言う。
「一目で波田氏とわかりました。彼はオーロマーレ傘下の『スピーシー』という会社で短期間の間に、我々のようなネットワーカーから400億円もの資金を集めたのです。集めたカネは恐らく波田氏が、すべて持っていってしまったのでしょう。テレビの取材には、さも自分も被害者であるかのように答えていましたが……」
波田氏が実質トップに立つネットワーク企業「オーロマーレ」。その下部組織に、スピーシー(代表・田中慎)という別法人があった。別法人といっても実質オーロマーレの別働隊。先のネットワーカーの言葉にあるように、このスピーシー、英国の公認スポーツ賭博業者「ブックメーカー」を使った投資で高配当を謳い、およそ400億円のカネを集めたが、本誌7月号が出た翌月、『読売新聞』が1面トップで、会員への配当がストップし、解約もできない実態を報じたことで一躍、その存在が知られるようになった。
「私たちネットワーカーの間では、蜂の巣をつついたような状態になりました。注ぎ込んだ資金はどうなるのか。いまもスピーシーは配当をストップしたままです」(同)
素人目には「詐欺」そのものにみえるが、この手の事案は、そう簡単には摘発されない。ネットワークビジネスでは被害者と加害者が混在するため、警察がなかなか手をつけたがらないのだ。
(中略)
さて、当の波田氏は現在どうしているのか。事情を知るさる関係者によれば、オーロマーレをさっさと見限り、舞台をインドネシアの首都ジャカルタに移し、新しい事業を展開しようとしているという。しかし、そのことはほとんど知られていないとも。
その関係者が言う。
「事業といっても、要は今までと同じカネ集めです。これまでに搾り取ったネットワークの下層にいる人からさらに巻き上げる。波田氏は今や新興宗教の教祖みたいなもので、下層のネットワーカーたちに、こうささやくのです。『大きな事業をしようとしている。あなただけにそれをお教えします。これに投資すれば、あなたはスピーシーで失ったものを取り返せるだけでなく、その数倍の儲けを得られる。その事業とは……』と。教祖が自分だけにカネ儲けの秘訣を教えてくれると思えば、そのことを誰も口外しないでしょう。だから、ジャカルタの新事業の話は広まらないのです。奸智に長けているというか……」
(中略)
波田氏のカモフラージュは徹底しており、新しく立ち上げようとしているジャカルタの事業の説明書にも次のように記している。
《私としましては株式会社スピーシーのトップリーダーとしての自覚があり、なんとしましても皆様の大切なお金をお返しするために株式会社スピーシーに協力させていただく所存でございます》
この作戦が功を奏したのだろう。新事業立ち上げですでに数十億円ものカネが波田氏のもとに集まっているという。(後略)