中小企業金融円滑化法の終了後、未曾有の倒産ラッシュが起きると盛んに喧伝されている。たしかに、円滑化法で返済猶予を受けた約40万社(現在は30万社)とみられる中小企業の多くは経営改善にはほど遠く、来年3月末の終了を機に、先送りされてきた破綻が一気に表面化しても不思議ではない。
しかし、急速な混乱、倒産ラッシュはないとみるべきだ。というのも、わが国の産業界や中小金融機関に先送りのツケを短期集中的に処理できる体力はなく、その受け皿も見当たらないからである。仮に処理体力があっても、食いぶちである融資先の切り捨ては自らの首を絞めることになる。つまり、円滑化法の出口戦略は各金融機関自らの体力に応じた処理にならざるを得ず、「来年4月以降も損失覚悟で返済猶予を継続するケースも出てくる」(大手信金幹部)ことから事態はより深刻といえる。
ここに、金融円滑化法適用企業の実態を示す興味深いデータがある。全国複数の金融機関からヒアリングした適用企業の「債務者区分」状況で、それによると「正常先」債権はわずか10〜15%(4〜6万社)にすぎない。一方、不良債権予備軍の「要注意先」は50〜80%(20〜30万社)に達し、「破綻懸念先」に格下げされたのは15〜25%(8〜10万社)にのぼる。「円滑化法後に再生支援や廃業などの抜本策が必要なのは5〜6万社」(金融庁関係者)どころか、7〜8割を占める要注意先、破綻懸念先25〜30万社が金融機関の選別対象になるわけで、倒産予備軍は優に10万社を超えることになる。
金融庁は、円滑化法の出口戦略として金融機関のコンサルティング機能の強化や債権放棄などの政策パッケージを打ち出している。しかし、そもそも地域金融機関に企業再生能力があればここまで地方は疲弊していない。債権放棄やDES(債務の株式化)、中小企業再生支援協議会の活用も本業自体の収益性がネックなのだから効果は限定的で、出口戦略は結局、廃業、もしくは倒産処理が主流にならざるを得ない。ただし、メガバンクや地銀、信金など業態や地域によって処理スピードにかなりのバラツキがあることから、総体としては緩やかな処理となり、最終処理までには少なくても2〜3年はかかるだろう。
そして、金融円滑化法後の最大の焦点は地域金融機関再編の行方だ。(後略)